妊娠するまでのストーリー「仕事と治療の両立」はできるの?【不妊治療・体験談】

イラスト/タカヤママキコ

妊娠・出産が成就するまでの間、不妊治療を通して、心も体もたくさんの経験をすることになります。
治療の流れはわかっても、実際にどんな気持ちの揺れが起こるのでしょう。経験者しかわからない先輩たちの声を集めました。
今回は「仕事と治療の両立」不妊治療体験談をご紹介します。

※各体験談は『たまごクラブ』読者を対象とした不妊治療に関するwebアンケートから。2023年6月実施。
※各体験談の★はアンケート回答当時の年齢で、妊娠に至った治療名を表示しています。

「不妊治療を始めてから妊娠するまでの体験ストーリー」 #2
※参考:「妊活たまごクラブ 初めての不妊治療クリニックガイド 2023-2024」

永遠のテーマ「仕事と治療の両立」はできるの?

不妊治療はタイミングが大事で待ったなし。仕事のスケジュールと折り合いをつけるのは大変です。治療に理解のある職場は増えてきたとはいえ、本当なら話したくないことも話さなくてはいけないという葛藤も。
どう乗り越えたのかを聞いてみました。

上司自身も8年間の不妊治療経験があったので、理解してもらえた

★現在の年齢:26歳
★治療内容:排卵誘発・タイミング法

生理が不順だったので婦人科を受診してみたら、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断され、より大きな病院で不妊治療を受けることになりました。排卵誘発のために頻繁に通院が必要になることもあり、職場の上司には不妊治療を受けることをはじめから伝えました。理解してもらえて、急な休みなども快く許可してもらいました。よくよく聞いてみると、実はその上司自身も、8年間の不妊治療経験があったとわかり、話してみないとわからないものだなぁと感じたのでした。

【経過】
◇25歳:生理不順で婦人科を受診。PCOSと診断され、転院。
◇26歳:タイミング法と排卵誘発1回目で妊娠。

お金がかかってもいいから時間を優先!働いているからこそできた治療かもしれない

★現在の年齢:30歳
★治療内容:体外受精

検査の結果、AMH値が40代前半くらいの数値と言われたときに、妊娠するのにどれだけ時間がかかるかわからないから、お金がかかってもいちばん可能性が高い方法を試したいと思いました。3ヶ月後に保険適用開始が決まっていましたが、それを待たずにチャレンジ。体外受精で受精しなかった場合は顕微授精してくれる方法で、1回目で妊娠。高刺激での治療を頑張りましたが、その分すぐにいい結果が出ました。2~3日に1回の通院はともかく、採卵するために自己注射をすることには抵抗もあったし、黄体ホルモンを保つために仕事中でも決まった時間に座薬や腟座薬を入れる必要があることも大変でした。たしかにお金はかかったので、仕事をしていなければ無理だったかもしれません。夜遅くまで診察をしているクリニックに少しだけ早上がりして通っていました。職場には不妊治療していることは言わなかったので、毎回適当な理由をつけるのが煩わしかったのはたしか。でも、仕事をしていたからこそ払える金額だったし、貯金がなければ厳しい治療費でした。すぐに体外受精をチャレンジしてよかったと今も思います。

【経過】
◇28歳:不妊治療クリニック初受診、検査。すぐに体外受精を勧められる。
◇29歳:体外受精1回目で妊娠。

仕事はやめたくなかったから、職場で話したくないことまで話しました

★現在の年齢:29歳
★治療内容:体外受精

排卵誘発はせずに自然周期でのタイミング法だったので、受診する日程の予想はとても難しいものでした。そのため、その都度上司に相談、勤務調整をしてもらい、仕事との両立が大変でした。かさむ治療費への不安から、仕事をやめる選択は避けたいと思っていたので、できれば話したくないような内容も、上司だけでなく同僚にも話さなくてはならなかったことはとても苦痛でした。おかげで協力はしてもらいましたが、受診が続くときは本当は数日続けて休みたいけれどそうもいかず、合間に仕事をしていたのでつらかったです。治療してよかったのは、不妊の原因を知ることができたこと。男性不妊がわかったので夫は葛藤があったようですが、積極的に取り組んでくれたのですぐに体外受精をして1回目で妊娠できました。

【経過】
◇27歳:不妊治療クリニック初受診。検査開始後、甲状腺の数値が悪いかもと言われ中断もあったが検査を続け、男性不妊がわかる。
◇28歳:体外受精1回目の移植で妊娠。

みんなの前でナイーブな内容を話したりと、苦痛が多くて仕事は退職

★現在の年齢:39歳
★治療内容:顕微授精

人工授精をしていたころには、排卵に合わせるため1週間に3回受診したときもありましたが、うまくいきませんでした。年齢的に妊娠するのが難しくなってきていたので、「今しかできないことなんだから」と親からも励まされ、夫もよく協力してくれたので、いっそのこと!と、顕微授精にステップアップしました。急に受診しなくてはならないことがよくあったので、職場では男性の上司に話したけれど理解を得ることができず、さらには大勢の前でナイーブな内容を話さざるをえなくなり……精神的につらかったです。当時は保険適用前で経済的にも負担が大きかったけれど、職場にそれ以上いるのも苦痛で、退職することにしました。それでも治療してよかったのは、子どもを授かれたことでした!

【経過】
◇37歳:自然妊娠、流産。
◇38歳:不妊治療クリニック初受診。タイミング法→人工授精2ヶ月→顕微授精。

はじめはすぐできると思ったのに、顕微授精まで。心身ともにいい状態で治療をするために、仕事はやめた

★現在の年齢:39歳
★治療内容:顕微授精

はじめはすぐに妊娠できると思っていたのに、なかなか妊娠しなくて、年齢的にも治療はどんどんステップアップするのであせる気持ちが強くありました。結局、我が家の場合は男性不妊がわかったのですが、世間的には女性側に不妊の原因があると思われることが多くて、不妊治療の理解はまだまだ低いと感じることもありました。大変だったのは治療と通勤の両立。住んでいた市内では人工授精までしか行えず、隣の市にある大学病院を紹介されたのです。転院前は、治療の時間を休み扱いにして診察後に出勤していましたが、通院時間が長くなり、体外受精になってからは治療を優先したかったので、仕事は退職することに。治療費のためには収入は必要だったけれどストレスも強くあったので、心身ともによい状態で治療したくて、退職という決断になりました。治療に専念して、顕微授精1回目でスムーズに治療は完了。不妊治療をしてよかったのは、生命の尊さを感じ、産まれた子どもをさらに愛おしく感じていることです。

【経過】
◇37歳:不妊治療クリニック初受診、検査開始。
◇37歳:タイミング法、人工授精。
◇38歳:体外受精・顕微授精に挑戦。1回目で妊娠。

事情を伝えても理解のない上司。休職してストレスが減ったことで妊娠できたのかも

★現在の年齢:31歳
★治療内容:顕微授精

生理不順があったので婦人科に行き、そこでタイミング法の指導も受けて半年ほど続けましたがうまくいかず、不妊治療専門病院に転院しました。人工授精を2回試したけれど妊娠できず、体外受精をすることに。治療のためには急な休みをとることが多くなってきて、上司には事情を伝えたけれど理解が得られず、休職せざるをえませんでした。2回目の体外受精は子宮外妊娠だったので入院。不育症専門病院で血液検査をしたあと顕微授精することになり、ようやく妊娠しました。仕事を休職してストレスをなくしたのも、結果的によい影響があったのかなと思っています。

【経過】
◇28歳:婦人科受診。タイミング法。
◇29歳:不妊専門病院へ転院。人工授精、体外受精。
◇30歳:不育症専門病院で検査。その後の顕微授精で妊娠。

教員としての仕事がハードで治療との両立が難しく、子どもが欲しい思いから退職することに

★現在の年齢:29歳
★治療内容:体外受精・顕微授精

治療を始めたころ、教員をしていたので、急な保護者対応や会議の延長などがあり、受診を予約していた日に残業になったりして、人工授精のスケジュールが崩れることがよくありました。治療をやめたいと思ったこともありますが、子どもが欲しい一心で頑張っていたのです。でも、人工授精まで進んでも妊娠できず、仕事との両立が苦しくなったため退職。仕事をやめてからは、気持ち的にもだいぶ余裕ができたと思います。その後、検査をしていくうちに、甲状腺の病気が見つかり、まずはその治療。甲状腺の数値が良くなったところで、体外受精・顕微授精をしたいと自分から医師に申し出て、妊娠までこぎつけました。ちょうど保険適用になったタイミングだったので経済的負担が少なくなり、かなり助かったことも体外受精にステップアップする後押しになったと思います。

【経過】
◇25歳:産婦人科でタイミング法、人工授精。
◇26歳:人工授精。
◇27歳:治療を休む。
◇28歳:検査で甲状腺の病気がわかり、治療。治療後に体外受精・顕微授精で妊娠。

正社員からパートになったりと大変だったけれど、仕事をしていて精神的にはよかった

★現在の年齢:34歳
★治療内容:排卵誘発のタイミング法

妊活スタートよりも前に、温泉に行きたくて生理をずらそうとピルをもらうため婦人科を受診。そのときに子宮筋腫が見つかり、妊娠しにくいかもしれないと診断されたのが始まりでした。夜勤があり、ホルモンバランスが乱れやすいことから、不妊治療を受けている同僚も多い職場で働いていました。最初は婦人科である程度タイミング法を行い、その後紹介状を書いてもらって専門の病院に転院。そこは顕微授精まで可能で、設備もいろいろ整っているところでした。卵管造影検査後、卵胞を育てるためのホルモン剤は、種類によっては吐き気やめまいなど、不調が出ることがあったり、筋肉注射が痛かったり。治療のときだけでなく体調が悪いこともたびたびあって、夜勤のない職場へ異動させてもらい、正職員からパートに転換しました。仕事と治療の両立は大変だったけれど、働いていなければ不妊治療のことだけ考えてしまいそうだったから、私には仕事をやめる選択肢はありませんでした。

【経過】
◇28歳:ピルの処方のため婦人科受診、検査で子宮筋腫が見つかる。治療。
◇29歳:夫婦で受診し、タイミング法開始。卵管造影検査の結果から、黄体ホルモン服用。注射による排卵誘発とタイミング法。
◇30歳:妊娠。

職場は協力的。でも、胚移植は3回失敗。落胆と、他の人ならかからない費用だと思うとつらかった

★現在の年齢:36歳
★治療内容:体外受精

夫とともに不妊治療専門クリニックを受診して、検査の結果は異常なしでした。人工授精2回、体外受精、再び人工授精と何度もチャレンジしては失敗し、子宮内膜炎が見つかり治療もしました。働きながらの通院は負担でした。どうしても突然休まないといけない日には、チームの同じ役職の人と上司に状況を伝え協力してもらいました。妊娠しないあせりや体の痛みもつらかったけど、自然妊娠すればかからなかったはずの費用なんだと思うと、とくに何度移植して妊娠しても流産したときは、人生でいちばんつらい時間でした。治療をやめようかと思ったときもあったけれど、凍結している卵を破棄することはできず……。その後、夫の転勤が決まったので、最後の移植と覚悟して3つの移植を試みて妊娠。帝王切開で無事に双子の赤ちゃんを出産できたので、頑張ってよかったと思いました。

【経過】
◇34歳:不妊治療クリニック初受診。検査後、人工授精、体外受精。
◇35歳:胚移植し、妊娠するも流産。再度移植し失敗。4回目の移植で双子妊娠。

■イラスト/タカヤママキコ
■構成・文/関川香織(K2U)

※記事掲載の内容は2023年8月25日現在のものです。以降変更されることもありますので、ご了承ください。

▼『妊活たまごクラブ 初めての不妊治療クリニックガイド 2023-2024』は、妊活から一歩踏み出して、不妊治療を考え始めたら手に取ってほしい1冊。

この記事のキュレーター

妊娠・出産・育児の総合ブランド「たまひよ」。雑誌『妊活たまごクラブ』『たまごクラブ』『ひよこクラブ』を中心に、妊活・妊娠・出産・育児における情報・サービスを幅広く提供しています。

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