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妊娠するまでのストーリー「治療そのものの大変さ」と「心の葛藤」【不妊治療・体験談】
イラスト/タカヤママキコ
妊娠・出産が成就するまでの間、不妊治療を通して、心も体もたくさんの経験をすることになります。
治療の流れはわかっても、実際にどんな気持ちの揺れが起こるのでしょう。経験者しかわからない先輩たちの声を集めました。
今回は「治療そのものの大変さ」と「心の葛藤」不妊治療体験談をご紹介します。
※各体験談は『たまごクラブ』読者を対象とした不妊治療に関するwebアンケートから。2023年6月実施。
※各体験談の★はアンケート回答当時の年齢で、妊娠に至った治療名を表示しています。
「不妊治療を始めてから妊娠するまでの体験ストーリー」 #1
※参考:「妊活たまごクラブ 初めての不妊治療クリニックガイド 2023-2024」
治療そのものの大変さと心の葛藤
不妊治療はさまざまな経過をたどります。
その道のりのなかで、受けた治療の内容と感じたことを話してもらいました。
なかなか進まない治療、子宮内胎児死亡、治療を休んで再開…9年かかって妊娠
★現在の年齢:38歳
★治療内容:顕微授精
初めて不妊治療クリニックを受診したのは28歳のときでした。検査してタイミング法を試すという通常の治療でしたが、なかなか妊娠しないので翌年に転院。今度は人工授精に4回トライしましたが、やはり妊娠できず。精子の状態が悪いということがわかり、体外受精にトライしました。でも、夫と考え方が合わなくて……、男性不妊なのに禁酒などの生活改善もしてくれず、なんとか協力はしてくれたけれど、顕微授精もなかなかできない状況でした。
ようやく妊娠できたとき、初受診から5年近くたっていました。ところが、初めて授かった子は8ヶ月で胎児死亡。言葉にはできないつらさで、1年間不妊治療を休みました。それでも、医師から「妊娠できる体だ」と言われていたので、もう少し治療を続けようと思いました。お金の心配ばかりでしたが、正直なところ仕事と治療の両立が厳しい状況でした。結局、職場からは、正社員からパートに移るように言われ、パートになったことを機に治療を再開することに。37歳で顕微授精で授かることができ、ようやくの妊娠となりました。
【経過】
◇28歳:不妊治療クリニック初受診。タイミング法。
◇30歳:不妊治療クリニックを転院。人工授精4回。
◇32歳:体外受精、精子の状態が悪くなかなか顕微授精できず。
◇33歳:初めて妊娠するが8ヶ月で子宮内胎児死亡。
◇34歳:不妊治療を休む。
◇35歳:パートに転職 不妊治療再開。
◇37歳:顕微授精で妊娠。
思春期からずっと不正出血があり、どうしてこんな体?と思っていたけれど、奇跡的に排卵できて妊娠
★現在の年齢:28歳
★治療内容:排卵誘発・タイミング法
思春期からずっと不正出血があって、ピルを服用していました。結婚をきっかけに不妊治療を始めましたが、薬と注射を使っても排卵せず、この先どうしようか悩みながらも注射での排卵誘発のため、多い時で毎日通院しました。まわりは普通に妊娠できているのにどうして、というあせりがあり、なんでこんな体に生まれたんだろうという悲しみもありました。それでも、夫は治療についていろいろと調べてくれたりしたし、職場では上司に相談すると、通院の際に融通を利かせてくれたりもしました。環境としては恵まれていたと思います。最終的には6回目のタイミング法で、奇跡的に排卵して妊娠することができました。
【経過】
◇27歳:不妊治療クリニック初受診。検査後、クロミッド、排卵誘発注射とタイミング法で妊娠。
無排卵が原因と思い込んでいたら、まさかの男性不妊で顕微授精に。「なぜ自分ばかり…」と思う日々
★現在の年齢:33歳
★治療内容:顕微授精
もともと生理不順だったので、自分でもおそらく無排卵だろうと思い、不妊治療クリニックを受診しました。はじめは生理さえ起きればタイミング法で妊娠できるだろうと簡単に考えていたのですが、まさかの男性不妊が判明。顕微授精でないと妊娠が難しいとわかったときはショックでした。職場を退職した次の日の朝にクリニックからその電話があり、まさかの事態に号泣しました。男性不妊だったので、夫は良質な精子が採れるように生活習慣の改善も積極的にしてくれて、治療については私が望むようにさせてくれました。それでも、私のほうは生理を起こすための低用量ピルの副作用がきつかったり、自然妊娠なら味わない痛みや出費や精神的苦痛があって、「なぜ自分ばかり……」と思う日々でした。とにかくただひたすらに、我が子に会いたいと言う気持ちで治療を頑張った、という感じでした。よかったことは、同じ経験をしている人に共感できて寄り添えるようになったことかなと思っています。
【経過】
◇31歳:不妊治療クリニック初受診、検査。男性不妊がわかり、顕微授精1回目で妊娠。
転院後、治療を休んだことも。もっと早く専門医のところへ相談に行けばよかった
★現在の年齢:36歳
★治療内容:体外受精
不妊治療をスタートしたのはブライダルチェックからでした。とくに原因は見つからず、タイミング法からスタート。でも、1年たっても妊娠しなくて、転院してさらに6ヶ月タイミング法をしましたが、それでも妊娠できなくて……。一時期、治療は休みました。そのころ、体外受精で妊娠・出産したというかたに相談する機会があり、「妊娠したいなら専門の病院へ行くべき!」と言われ、具体的な病院を教えてもらったことが転機になりました。周囲からの「子どもはまだ?」の質問がつらい2年間、不妊治療専門ではない病院で長い期間を過ごしてしまったことは少し後悔しています。早く専門医のところへ相談に行って!と、これから治療をする人には私もアドバイスしたいです。
【経過】
◇32歳:ブライダルチェックを受けタイミング法をスタート。
◇33歳:タイミング法で妊娠せず転院し、さらにタイミング法を6ヶ月したのち、治療を休む。
◇34歳:不妊治療の専門病院へ転院。体外受精2回目で妊娠。
普通の倍の量の注射でも排卵しなかったので人工授精を飛ばして体外受精に
★現在の年齢:33歳
★治療内容:体外受精
普通の倍の量の注射でも排卵しなかったことで、タイミング法での妊娠をあきらめることに。人工授精を飛ばして体外受精に即ステップアップの提案があったとき、はじめは抵抗がありました。「どうして自分だけ……」と思ったこともありましたが、芸能人の不妊治療経験について読んだりすると、そうでもないんだなと思いました。迷っていることをたまたま知り合いに話したところ、その人も体外受精で妊娠経験があると知り、自分だけじゃないんだと、さらに前向きに進められました。仕事のスケジュールを組むのはなかなか難しいことが多かったけれど、自分を必要としてくれる職場の人のおかげで仕事をしていてよかったと思いました。
【経過】
◇29歳:不妊治療クリニック初受診、検査。
◇29歳:タイミング法1回目で妊娠するが8週で稽留流産。
◇30歳:タイミング法6回。
◇30歳:体外受精1回目で妊娠。
3回人工授精してもうまくいかず、排卵誘発剤を変えたら妊娠できた
★現在の年齢:39歳
★治療内容:人工授精
タイミング法を5回しましたが、なかなか妊娠できないので人工授精に。排卵誘発剤を使っていたのですが、子宮内膜がどんどん薄くなり、3回人工授精してもうまくいかなくて落ち込んでいました。手応えがまったく感じられなかったので、もう治療はやめようと思ったけれど、夫が「お金のことは気にしなくていい」と言ってくれたので、「いつかできればいいか」と思えるようになって続けることに。私があせっているのに夫はお気楽すぎて腹が立つこともあったけれど、協力的ではありました。ドクターからの「排卵誘発剤を変えてみよう」という提案を試したら、子宮内膜が厚くなり4回目の人工授精で妊娠できました。
【経過】
◇36歳:不妊治療クリニック初受診。
◇36歳:タイミング法 5回。
◇37歳:人工授精を4回目にして妊娠。
痛くないといわれたけれど地味に痛かった人工授精、5回目で妊娠
★現在の年齢:32歳
★治療内容:人工授精
不妊治療を始めて、比較的すぐに人工授精まで進むことになりました。人工授精は痛くないといわれるけれど、私の場合は毎回地味に痛くて……。さらに生理がきたときの気持ちのつらさと、排卵誘発剤の副作用で太ったり気分が悪くなったりしたこともあって、人工授精の失敗が続いたとき、治療を少し休憩しようかと思ったこともありました。子宮に風船を入れる検査もかなり痛くてつらかったです。ただ、夫の親戚が「子ども、まだなの?」というような発言を平気でするので、「とりあえず黙ってて!」という気持ちがあったことが、治療を続けられたモチベーションだったかもしれません。4回目の人工授精が失敗したときに、「5回目以降は成功率が横ばいだから」とステップアップを提案されました。でも、費用や治療に伴うデメリットも説明されて、正直ステップアップする気持ちにはなかなかなれませんでした。そしてもう1回、人工授精に挑戦したら授かることができたのでした。
【経過】
◇30歳:不妊治療開始。
◇31歳:人工授精5回目で妊娠。
実はほかの病気が見つかることもある
不妊治療がきっかけで病気が見つかった人も。
その治療や、その後の不妊治療について話してもらいました。
不妊治療を…と思ったら、まさかの卵巣腫瘍。摘出手術後に妊娠できた
★現在の年齢:38歳
★治療内容:手術後、タイミング法
36歳という年齢でもあったので、とりあえず不妊相談で内診してもらったところ、卵巣腫瘍が見つかりました。腫瘍のせいだけで妊娠しにくかったわけではないと思いますが、手術で卵巣腫瘍を取り除いたあとにスムーズに妊娠できました。実際にはタイミング法と卵巣腫瘍の手術以外に不妊治療というほどのことはしていないのですが、病院に行ってよかったと思うのは、自分たちだけで考えたタイミングではなく、基礎体温表を見てもらったりして医師の話を聞くだけでも不安がやわらいだし、アドバイスがもらえたことでした。夫も、検査を受けてほしいと言ったら、きちんと受けてくれました。
【経過】
◇36歳:初めて不妊相談に産婦人科へ。そこでまさかの卵巣腫瘍が見つかる。
◇36歳:手術で卵巣腫瘍摘出後、タイミング法3回目に自然妊娠。
子宮筋腫の手術後に体外受精しようとしたら自然妊娠できた
★現在の年齢:37歳
★治療内容:体外受精に向けて採卵後、自然妊娠
初めて生殖医療センターを受診したのは34歳のときでした。検査を進めるうちに子宮筋腫が見つかりました。主治医からは人工授精を5回しても妊娠しなければ子宮筋腫の手術をしたほうが良いと言われましたが、とうとう3回目に妊娠成立しなかった時に、原因は筋腫だと思うからと手術を勧められました。手術後は半年間妊娠してはいけないため、その間に体外受精の準備をしていたのですが、受精卵を戻す計画を立てるために受診したところ妊娠していました。ほんとうに原因は子宮筋腫が邪魔をしていたことだったようなので、早く手術して病巣を切り出してくれた先生に感謝しています。
【経過】
◇34歳:生殖医療センター初受診。検査で子宮筋腫が見つかる。
◇34歳:人工授精3回。子宮筋腫の手術を受ける。
◇35歳:体外受精の予定を立てるうちに自然妊娠。
子宮体がんが見つかって1年間不妊治療は中断。でもその後すぐに顕微授精して妊娠
★現在の年齢:36歳
★治療内容:顕微授精
クリニックでの指導でタイミング法を3回ほど試しましたが、夫婦間でなかなかタイミングを取れずうまくいきませんでした。そのうちに検査で子宮体がんが見つかりショックでしたが、ごく初期だったため、幸いにも薬を飲むだけの治療となりました。病気がわかったときは、さすがに不妊治療はもうやめようかとも思いました。それでも、母親になってみたい、親に孫を見せたいという自分の思いがあって、頑張って不妊治療を続けました。結局、子宮体がんの治療には1年かかり、タイミング法はしたくなく、モヤモヤした気持ちでいたところ、すぐにステップアップの提案があって顕微授精したことが結果としてよかったです。
【経過】
◇33歳:不妊治療クリニック初受診。
◇33歳:タイミング法を3回ほど試したあと、子宮体がんが見つかり治療。
◇34歳:顕微授精で妊娠。
■イラスト/タカヤママキコ
■構成・文/関川香織(K2U)
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