妊娠を自分でコントロールする権利?日本と海外の現状

SRHRとは、Sexual and Reproductive Health and Rightsの略で、日本語では「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。あらゆる世界の現場での体験をもとに、現在SRHRアクティビストとして活動中の福田和子さんに、前半ではSRHRについて基礎知識を、後半は日本と世界の違いや、何が必要なのかを伺いました。

–世界の国々はどんな状況なのでしょうか?

「例えばスウェーデンにおいては、自分のからだは自分で決められることが権利として認められているため、21歳までは緊急避妊や避妊具などの費用が公的補助されて無償です。

 また、産婦人科医や助産師、カウンセラーが在籍する、若年者専用の『ユースクリニック』と呼ばれる場所250カ所以上あります。妊娠の相談のみならず、『10代の時に家族の問題をカウンセラーに相談に行った』という話も聞きました。私も低用量ピルを貰いに行ったら、『自分のことをきちんと考えて偉いね』と褒められました。

 私の中で避妊などへの意識が180度変化した瞬間です。日本では、例えば若者が避妊を望むと、むしろ怒られるような雰囲気になることもあるのにスウェーデンでは褒められるとは…と驚いたんです。そもそも避妊や中絶が、最低限、当然必要な医療、権利として考えられているんですよね。」

 

日本を含むアジア全体の意識が低いのかというとそうではなく、日本が特殊だと語る福田さん。

「以前、国際会議で日本で様々な避妊法が認可されていない話をしたら、ネパールの助産師さんに『ネパールにはどの方法もあるから、今度サンプル持って説明に行こうか!?』と言ってもらいました。多くのアジア諸国でも、避妊は無料、安価に提供されています。働いていたルワンダの難民キャンプにも、ユース専用の、ユースフレンドリーなSRHケアを受けられる場所がありました。日本よりよっぽど物理的、経済的困難がある国々もSRHRの取り組みは進めている。日本は取り残されています。」

 

現在日本では、緊急避妊薬の入手には医師の処方箋が必要で、薬局で処方箋の必要なく市販化するかどうかの議論がなされている最中ですが、すでに世界90カ国以上で薬局での購入が可能だそう。日本の取り組みの遅れが、ここにも見受けられます。

–この状況を変えるためには、どんなことが必要だと思いますか?

「やはり、国が動いてくれないと始まらないですよね。政治の場に若年女性の声が届いていないのがいちばんの問題かもしれません。署名を集めても、受け取る側が高齢男性ばかりでは理解、応援どころか興味すら持ってもらいづらいのが現実です。同様の理由で性教育も遅れており、さまざまなリスクもある世の中にもかかわらず、私たちは自分を守る術を奪われ続けているんですよね。

 現在の世界の潮流は『包括的性教育』。私が翻訳でかかわったユネスコの『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』の中で8つキーワードが出てくるのですが、人権の話、ジェンダーの話があってから初めて、避妊の話などが出てくるんです。性的なことや二次性徴的なことはほんの一部です。一方日本では、性行為そのものを表したり、性感染症、妊娠・中絶などのイメージが強いですよね。日本の性教育からごっそりと抜けている部分がかなりあることが問題だと思います。

 今はインターネットが主流の時代で、若年層が正誤問わずたくさんの情報を得られてしまいます。だからこそ、安心して頼れる情報を、若者にも届くように、大人が責任持って伝えていかなければいけないと思います。」

–「SRHR」を深く理解するために、私たちがまずできることはなんでしょうか?

「自分自身のSRHRを大切にし、知ることが第一歩です。妊娠を自分でコントロールすることもそのひとつ。避妊というのは『健康の話』であり、『権利の話』なんです。『必要なときには話していいんだ』『ピルを飲んでいいんだ』など、周りに話したり意見を交わすことで、少しずつでも変わっていくことはあると思います。」

 日本において、「SRHR」がメジャーな言葉として広まることを目指し、自分にできることから始めてみてはいかがでしょうか。

 

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この記事のキュレーター

ハースト婦人画報社が運営する各メディアが取材を重ねて得たセクシュアルウェルネスに関する知見を、複数の媒体で横断的に発信するプロジェクトが「WeSAY(ウィーセイ)」です。

あらゆるジェンダー、セクシュアリティの人が、身体的、感情的、精神的、社会的にウェルビーイングな状態でいられるための情報を発信しています。


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