【不妊治療】タイミング法、人工授精、体外受精。カップルで理解すべき次に進む目安

妊活をしているのになかなか妊娠しない、もしかして不妊症? でも不妊治療ってどんなことをするのかわからなくて不安……。
大丈夫です。不妊治療はいきなり難しいことをするわけではありません。自分の体を知ることから!と思って、スタートしましょう。
今回は、『不妊治療のステップアップ』について、齊藤英和先生に詳しく解説していただきました。

「妊活を始めたけれど……、そろそろ専門クリニックへ!? 受診する前に知っておきたい不妊治療スタートガイド」 #4
※参考:「妊活たまごクラブ 2023-2024年版」

体にも経済的にも負担のかからない治療方法から始めていきます

カップルで不妊検査を受け終わったら、治療計画に沿っていよいよ治療が始まります。進め方は、カップルによって異なりますが、一般的には、ここで紹介するような順序をたどります。まずはタイミング法を試し、妊娠しなければ次の方法は人工授精、さらに体外受精と進むこともあります。もし、最初の検査でハッキリした原因がわかった場合は、すぐに人工授精、体外受精・顕微授精へと進むケースも。保険適用になったことで、治療のステップアップの経済的な部分は負担が軽くなり、時間を待たずに一気に進めやすくなりました。

不妊検査を受け、原因がわかったら治療する

検査でトラブルが見つかれば、まずはそのトラブルを解消する治療から。排卵に問題があれば排卵誘発剤、黄体ホルモン剤など投薬中心の方法があります。子宮筋腫を取り除くなど、外科手術を行うこともあります。男性も治療が可能なトラブルの場合は治療します。

【Step UP!】タイミング法を行う(平均治療期間:3~6ヶ月)

★妊娠しやすいタイミングを指導される方法
タイミング法は排卵日を予測し、医師から指示されたタイミングにセックスを行うことで、自然妊娠の確率を高める方法です。治療の前段階でもある不妊検査と並行して、タイミング法を行うケースも多くあります。検査は、基本的に排卵日を予測したり、排卵の有無を確認したりするのみ。状況に応じて、黄体ホルモンを補充したり、排卵誘発剤を用いることも。排卵誘発剤には質のよい卵子を育て、排卵を促す効果があります。

【タイミング法のプロセス・1】検査で排卵日を予測する

排卵は卵胞が直径20mm前後に成長したころに起こるため、女性が超音波検査を数回受け、卵胞の大きさを基に、さらに尿中LHホルモンを検出する排卵検査キットを併用して医師が排卵日を特定。セックスのタイミングが指導されます。

【タイミング法のプロセス・2】排卵の有無と状態を確認する

セックス後に超音波検査によって排卵の有無を調べます。また、子宮内を着床しやすい状態に整える黄体ホルモンの分泌状態を調べ、足りない場合は補充します。

【タイミング法のプロセス・3】妊娠判定検査を行う

月経予定日を過ぎたら、尿検査や内診、超音波検査などを行い、妊娠が成立したかどうかをチェックします。

人工授精にステップアップする目安は?

男性側に精子が少ない乏精子症や精子の運動性が低い精子無力症がわかった場合や、女性側に精子の侵入を妨げる頸管粘液不全などのトラブルがある場合は、精子が子宮内をスムーズに進むことができないので、精子を直接子宮に送り込む人工授精に進みます。

【Step UP!】人工授精を行う(平均治療期間3~6ヶ月)

★精子を子宮に注入して受精の確率を高める方法
人工授精は、採取した精子を専用の注射器を使って子宮の奥へ注入し、受精の確率を高める方法。この方法を行うのは、男性側に乏精子症や精子の運動性が低い精子無力症、女性側に精子の侵入を妨げる頸管粘液不全などのトラブルがあり、精子が子宮内をスムーズに進むことができない場合です。

【人工授精のプロセス・1】排卵日に、採取した精子を子宮に注入する

検査を行って排卵日を予測したら、その日にカップルで来院します。病院で精液を採取して処置をしたあとに、精子を専用の注射器で子宮に注入します。

【人工授精のプロセス・2】排卵の有無と黄体ホルモンの分泌状態を確認する

予測した排卵日のあとに超音波検査を行います。排卵が正常に起こったか、子宮内を着床しやすい状態に整える黄体ホルモンが正常に分泌されているかをチェックします。

【人工授精のプロセス・3】妊娠判定検査を行う

月経予定日を過ぎたら、妊娠が成立したかどうか、超音波検査や尿検査、内診などで判定を行います。

体外受精/顕微授精にステップアップする目安は?

タイミング法、人工授精と進んでもなかなか妊娠しないとき、もっとも妊娠率が高いとされる体外受精・顕微授精へとステップアップします。年齢が高く、妊娠できる可能性が少しでも高いうちに進めたい場合には、早めにここまで進める場合があります。

【Step UP!】体外受精/顕微授精を行う(平均治療期間6~24ヶ月)

★精子と卵子を体外で受精させ、子宮に移植する方法
体外受精や顕微授精は、精子と卵子を採取して体の外で受精し培養したあと、細胞分裂した胚を子宮に移植する方法です。受精を医師の手で行うため、男性の精子無力症や女性の卵管障害がある場合に、とくに有効な治療法といわれています。体外受精と顕微授精の違いは受精の方法のみ。そのほかの過程は両者とも同じです。

【体外受精/顕微授精のプロセス・1】排卵誘発を行う

質のよい卵子を育てるために、排卵誘発剤を用いるのが一般的です。状況に応じて、体への負担が軽い、低刺激のタイプを用いる場合も。

【体外受精/顕微授精のプロセス・2】採卵・採精を行う

卵子が育ったら、卵巣から卵子を採取する採卵を行います。採卵後、精液を採取する採精を行い、そのなかから運動性の高い精子を選択。

【体外受精/顕微授精のプロセス・3】受精(媒精)を行う

体外受精の場合は卵子に精子を振りかける媒精を行い、顕微授精の場合は精子を卵子の細胞質の中に注入して、それぞれ受精させます。

【体外受精/顕微授精のプロセス・4】胚を培養する

受精が起こると細胞分裂が始まります。2~6日かけて、4~8分割胚、または胚盤胞と呼ばれる状態になるまで、培養器の中で培養します。

【体外受精/顕微授精のプロセス・5】胚を移植する

4~8分割胚になったら、良質の胚を選び子宮内に移植します。状況に応じて、約5日で胚盤胞と呼ばれる状態になってから移植する場合も。

【体外受精/顕微授精のプロセス・6】検査で妊娠判定を行う

胚を移植してから2週間が過ぎたら、妊娠が成立したかを判定します。判定は時期に応じて血液検査や超音波検査などで行います。

採卵から受精までのスケジュール

●3日目~
採卵周期の始まり。内服、注射などで卵巣を刺激

●6~8日目
卵胞がどのくらい育っているかをチェック

●9~12日目
採卵日が2~3日前に決まる

●採卵36時間前
卵を成熟させるためにhCG注射、または点鼻薬

●採卵当日
来院し、採卵。採卵後、数時間以内に洗浄精子を媒精(体外受精)、または顕微授精する

将来の不妊に備えて「卵子の凍結」はできますか?

技術的には可能です。ただ、卵子は凍結した年齢時点のものですが、母体は年齢が上がれば、妊娠成立後の妊娠経過・出産・産後のリスクは格段に上がり、さらにがんなど健康を害するリスクは高くなります。また、凍結した卵子は保管にも解凍にも費用がかかります。凍結した卵子を使って、必ずしも妊娠が成立するとは限りません。それよりも自然妊娠できる環境を早く整えることを考えたほうがいいでしょう。

卵子凍結と凍結胚って違うの?

体外受精では受精後、「質のよい胚(受精卵)」が複数個育つことがあります。1回の移植に使うのはたいてい1個のみなので、残りの良質の胚は凍結保存し、再度移植する場合に解凍して使います。これが凍結胚です。一方、凍結卵子は解凍してから受精を行うので、そこから「質のよい胚」に育つかどうかは未知数ということになります。

■監修

齊藤英和 先生

■イラスト/牛久保雅美
■取材・文/関川香織

※記事掲載の内容は2023年2月25日現在のものです。以降変更されることもありますので、ご了承ください。

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この記事のキュレーター

妊娠・出産・育児の総合ブランド「たまひよ」。雑誌『妊活たまごクラブ』『たまごクラブ』『ひよこクラブ』を中心に、妊活・妊娠・出産・育児における情報・サービスを幅広く提供しています。


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