不妊検査は日々進化している!知っておきたい不妊のこと

皆さんは「不妊」がどのような状態のことなのか、そして、もし自分のカラダが妊娠しにくい状態ということが分かった場合には、どのようなことから取り組み始めたらいいか知っていますか?
今回は、いつかは子どもが欲しいと考えている方や妊活中の方にぜひ知ってほしい、自分のカラダの状態をチェックできる検査をご紹介します。

そもそも不妊とはどんな状態?

一般的に避妊をしていないカップルであれば、約8割が1年以内に妊娠すると考えられています。

そのため、日本産婦人科学会では、不妊を「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているのにもかかわらず、1年間妊娠しないもの」と定義しています。

よって、この「1年妊娠しない状態」というのが不妊治療の検討を始める1つの目安となるでしょう。

不妊を改善するために病院・クリニックを受診した場合、まずは不妊検査を受けることになります。 不妊検査は身体に妊娠を妨げているところがないかを調べるために行うもので、女性も男性も受診することが推奨されています。

女性の不妊検査の基本的な検査項目は
・問診
・内診
・超音波検査
・子宮卵管造影検査
・血液検査
などです。

さらに不妊検査は日々進化しており、子宮内の環境を調べることや個人差のある最適な着床時期を特定することができる先進の不妊検査も登場しています。

先進の不妊検査とは?

先進の不妊検査の1つに、

・子宮内の環境を調べる「EMMA(子宮内膜マイクロバイオーム検査)」「ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)
・着床のタイミングを特定できる「ERA(子宮内膜着床能検査)

という検査があります。

「EMMA」「ALICE」は赤ちゃんが育つ場所である子宮に関する検査、「ERA」は受精卵が着床する場所である子宮内膜に関する検査です。

それでは、着床や妊娠の継続において重要な役割を果たす子宮や子宮内膜に関する検査とはどのようなものなのか詳しくみていきましょう。

子宮内の環境を調べる「EMMA検査」「ALICE検査」

EMMA検査・ALICE検査は妊娠を望むすべての女性におすすめの検査です。

実際に検査を受ける際には「EMMA検査+ALICE検査を受診する」、または「ALICE検査のみを受診する」という2つの選択肢があります。

これはEMMA検査にはALICE検査が含まれているためです。

EMMA検査では「子宮内膜に存在している菌を網羅的に調べ、子宮内でよい働きをする乳酸桿菌が生息しやすい環境であるか」を調べることができ、ALICE検査では「着床や妊娠の継続を阻害する要因となる病原菌」を特定することができます。

子宮内に乳酸桿菌が多いと着床率・妊娠率・出生率が高い

今まで子宮内は「無菌」と思われていましたが、近年の研究によって、子宮内には細菌が存在することが明らかになり、さらにラクトバチルス属という乳酸桿菌が90%以上あると、着床率・妊娠率・出生率が高いということがわかりました。

乳酸菌と妊娠率の関係を調査した研究では、乳酸菌の少ない群の妊娠率は33.3%であったのに対し、乳酸菌が多い群の妊娠率は70.6%であった、と調べた人数は32人と少ないながらも大きな差がみられたということが論文で報告されています。

また、妊娠継続率や出生率にも差がみられました。(※1)

Moreno and Simon et al., 2016

しかし、このラクトバチルス菌は、ストレスや風邪などの体調不良、抗生物質の投与、ホルモンバランスの乱れなどによって、減少してしまうことがあります。

つまり、誰でも子宮内の乳酸桿菌が減少し、妊娠率や着床率が下がってしまっている可能性があるということです。

この「子宮内でよい働きをする乳酸桿菌が生息しやすい環境かどうか」を子宮内膜に存在している菌の割合を細かく調べることで確認できるのが、EMMA検査の特徴の1つなのです。

妊娠を阻害する慢性子宮内膜炎を引き起こす菌がいる

ラクトバチルス菌は子宮内でよい働きをしますが、子宮内に存在する細菌の中には悪さをする菌もいます。

慢性子宮内膜炎は、着床障害や反復流産の要因となる疾患で、多くの場合、子宮内の細菌感染によって発症します。

また、発症しても、症状はなく、自分で気が付くことが難しい疾患です。

ALICE検査では、慢性子宮内膜炎を引き起こす病原菌として関係性のある10種類にターゲットを絞り、それらの菌が一定以上検出されるかどうかを調べます。

そして、もしある菌が一定以上検出された場合は、その菌に対応する適切な抗生剤を使って、治療を行うことができるのです。

着床の窓のタイミングを特定できる「ERA検査」

EMMA検査・ALICE検査はこれから妊娠を望むすべての女性が対象だったのに対し、ERA検査は、胚移植(体外で受精した受精卵が細胞分裂したのちに体内に戻す方法)を数回行っても、着床せず、妊娠成功に繋がらなかった人にとって有効な検査といえます。
というのも、ERA検査では最適な着床の時期である「着床の窓」を特定することができるからです。

従来の体外受精では、取り出した卵子と精子を体外で受精した後に、再度体内に戻すタイミングを排卵日から約6日目としていました。 しかし近年の研究から、最適なタイミングは±2日程度の個人差があるということがわかったのです。

つまり、

「Aさんは、5日目に受精卵を体内に戻したほうが良い」
「Bさんは、7日目に受精卵を体内に戻したほうが良い」

と着床の窓(最適な着床タイミング)には個人差があるにも関わらず、一律で約6日目に体内に戻していたために、受精卵には問題がなくても、体内に戻すタイミングに問題があり、着床できなかった可能性があるということです。

ERA検査では、患者個人の「着床の窓」を特定することができるため、個人差を考慮した最適なタイミングで受精卵を体内に戻すことができます。

実際にERA検査では、妊娠率が約25%向上したという臨床データが確認されています。(※2)

出典:ASRM Abstracts, Vol. 106, No. 3, Supplement, September 2016 (ClinicalTrials.gov Identifier: NCT01954758)

(※「個別化された胚移植」がERA検査によって、個人差を考慮した最適なタイミングで体内に受精卵を戻した場合の数値)

凍結胚が準備できた方や、 これまで胚移植を3回以上行っても、妊娠につながらなかったという方は、検査を受けてみてはいかがでしょうか?

実際に検査を受けた方の体験談

ここまでERA・EMMA・ALICE検査について詳しく説明をしてきましたが、実際にこれらの検査を受けるとどのようなことがわかるのでしょうか。

実際に検査を受診した方々へ体験談を聞きました。

43歳でERA検査を受診

39歳で体外受精を海外でスタートし、日本で3つの不妊クリニックへ通っていました。

着床不全の回数は合計6回で、うち1回は化学流産、さらに2回の流産を経験していたときに、正常胚を慎重に移植したいとの思いからERA検査を受ける決断をしました。

その結果、着床の窓が1日ずれていることがERA検査によって判明しました。 年齢的に時間が限られている中で、この検査を受けることができよかったと思います。

37歳でERA・EMMA・ALICE検査を受診

35歳で結婚して3年半、本格的に不妊治療クリニックに通始めて2年のタイミングでERA・EMMA・ALICE検査を受診しました。

体外受精まで治療を進めても結果が出ず、必死だった時に主治医へ「何かほかに検査できることはありませんか?」と尋ねたところ、比較的新しい検査だし、費用もかかるが…と案内されたことがきっかけで受診をしました。

その結果、子宮内環境があまりよくないこと、さらに着床が24時間うしろにずれていたことが判明しました。

ゴールの見えない、もしかしたらないかもしれないという暗闇を手探りで進んでいる状態のときに、少しでもきっかけや手がかりをつかむことが大きな支えになりました。

※個人の体験の感想であり、効果を保証するものではありません。

このようにERA・EMMA・ALICE検査を受けることによって、不妊治療を前進させることができた方々は多くいるようです。「不妊かもしれない」と思った時には、ERA・EMMA/ALICE検査を受診することも選択の1つとして、ぜひ覚えておいてください。

(※1)Evidence that the endometrial microbiota has an effect on implantation success or failure, Moreno and Simon et al., 2016

(※2)2016 ASRM Distinguished Researcher Award

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この記事のキュレーター

ルナルナ編集部と生殖医療サービス専門の遺伝子検査会社「アイジェノミクス・ジャパン」が、妊活・不妊治療をサポートする最新情報をお届けします!


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