【医師Q&A】妊娠するには卵子がいくつ必要なのか?

妊活や不妊治療について患者さんが不安や疑問に思うことを、ルナルナがズバリ専門医師に質問!!
今回は、「不妊治療を考えたら、できるだけ早く妊娠・出産して子育てをスタートすることを目標に!」と語る不妊治療の専門医師に、妊娠に必要な卵子とは?に答えていただきました。

Q:妊娠と卵子について

不妊の原因に卵子の老化が関係すると聞きます。不妊治療に進むにあたって、妊娠するにはどんな状態の卵子が、何個必要なのか教えてください!

A:不妊治療の専門医師、浅田レディースクリニックの浅田義正先生に聞きました。

医療法人 浅田レディースクリニック院長 浅田義正先生
卵子について、きちんとその性質やしくみを理解している女性は意外と少ないようです。
不妊治療で妊娠を目指す上で、「卵子」について正しい知識を持つことは、自身にとって適切な不妊治療方法を選択する際に大切な指標になります。それぞれの条件下において妊娠率のカギを握るのは、精子ではなく、ほとんどが女性のみなさんの中に眠っている卵子なのです。

卵子は「毎月新しく生まれるもの」ではなく「生まれる前に作られたもの」

「毎月排卵が起こる」と聞いて、「卵子は毎月新しく生まれるもの」というイメージを持ってしまっている女性も多いかもしれません。しかし、卵子が作られるのは、じつはたった一度だけ。母親の胎内にいるときに一生分の卵子が作られ、卵巣の中に保存されている状態なのです。

つまり卵子は、30歳の人なら30年以上、40歳の人なら40年以上時間が経過した細胞になっているということ。年齢が上がるほど卵子は老化しており、経年経過に合わせて質が低下するために妊娠しにくさにつながるのです。
医療法人 浅田レディースクリニック院長 浅田義正先生
また、卵子は老化するだけでなく数も少なくなっていきます。
胎児のときに約700万個作られた卵子は、その後はどんどん減っていき、生まれるときには100200万個、初めて月経を迎えるころには30万個に。その後も1日約30個のペースで消えていき、35歳ごろには23万個と、生まれたときのわずか12%しか残っていない状態になります。

卵巣の中に卵子がどのぐらい残っているかを「卵巣予備能」と言います。卵巣予備能は、血液検査をしてAMH(アンチミューラリアンホルモン)値を調べることで予測できます。

この卵巣予備能も一般的には年齢とともに低下しますが、個人差が大きく、同じ年齢でも卵巣内に残っている卵子の数は人それぞれ。「同じ年齢の友人が妊娠できたから、自分もできる」とは限らないので、赤ちゃんが欲しいと考えている女性であれば、やはりきちんと自分のカラダの状態を知ることが重要になってきます。

卵子は「毎月新しく生まれるもの」ではなく「生まれる前に作られたもの」

まず、「たくさんある卵子の中から、いい卵子だけが選ばれて排卵している」というのは間違いです。
卵巣で眠っている卵子は、排卵の6ヵ月前に目覚め、半年かけて成熟していきます。そして、成熟した卵子の中から1つの卵子だけが選ばれて排卵し、それ以外の卵子はしぼんで消えます。

選ばれた1つは「最も質がいいから」選ばれたわけではなく、「たまたまその時期に、ちょうどいい大きさ(成熟の程度)だったから」選ばれただけ。つまり、“質のいい卵子”がセレクトされるわけではないのです。

医療法人 浅田レディースクリニック院長 浅田義正先生

そもそも“いい卵子”というのは、受精した後、細胞分裂してからの様子で初めて分かります。
きれいに細胞分裂を続け、受精卵として成長・着床し、赤ちゃんにまで育ったものがいい卵子だったということになります。つまり“いい卵子”よりも実は“質のいい受精卵”が大切なことです。

不妊治療において、体外受精や顕微授精では、人工的に卵子を取り出して、そこに精子をふりかけたり、あるいは顕微鏡下で精子を1匹、卵子に注入したりしまが、精子が入ったからといって、必ずしもすべてに受精現象が起こるわけではありません。きちんと成長する“いい卵子”に精子が結びつき、“いい受精卵”になって、妊娠・出産にたどり着くのです。

受精卵が育ちにくい理由は、カップルの遺伝子の相性など、いくつかありますが、いちばんの要因は、先にお話しした卵子の老化(それによる染色体の異常)です。なので「妊娠する確率は、卵子で決まる」といっても過言ではありません。そのため不妊治療では、眠っていた遺伝子がちゃんと再稼働し、十分に受精し、成熟できる卵子を多くとる(採卵する)ことが重要になります。

妊娠の確率を上げるためには、いくつの卵子があればいい?

欧米の学会による報告では、1人の子どもを得るために必要な卵子の数は平均25.1個、38歳未満の女性に限っても、6~16個の卵子が必要といわれています。(※1)
浅田レディースクリニックのデータでは、31~35歳の人で、1つの良好胚盤胞(子宮に戻せるぐらいまで受精卵が成長したもの)を得るために平均3個の胚盤胞が必要で、そのためには平均13個の卵子が必要でした。(※2)年齢が上がるほど、卵子の老化により妊娠率は下がるため、必要な卵子の数も多くなります。

医療法人 浅田レディースクリニック

医療法人 浅田レディースクリニック

※1:Best practices of ASRM and ESHRE : a joureney though reporoductibe medicine L. Gianaroli, C.Racoeshy, J.Geraedts,M.Cedars, A.Makrigiannakis, and R. Lobo Hum Reporod. 2012 Dec;27(12)3365-3379 より
※2:浅田レディースクリニック 2013年〜2017年実績より

卵子について正しく理解し、少しでも早く「適切な不妊治療」に取り組んでほしい

体外受精で受精卵を作るところまでは、医療の力でサポートできます。しかし、受精卵が育ち、妊娠して出産できるかどうかは、医療や人の力でコントロールできることではありません。不妊治療をはじめるときには、そのことも理解しておく必要があります。

残念ながら、食事やストレス解消など、ライフスタイルの改善だけで卵子の質を高めたり、妊娠率を高めることはできないのです。妊娠するためには、「エビデンス(科学的根拠)に基づく適切な不妊治療」が必要で、赤ちゃんが欲しいと考える女性にまずしていただきたいことは、「正しい知識を持つこと」と「少しでも早く行動を起こすこと」です。

医療法人 浅田レディースクリニック院長 浅田義正先生

時代とともに不妊治療への社会の見方も変わっており、体外受精も受け入れられるようになってきています。「なかなか妊娠できない」と感じたら、早めに専門の医療機関を受診し、一刻も早い妊娠・出産につながるよう、適切な不妊治療を受けていただきたいと思います。

ルナルナからのおすすめ

不妊治療についてもっと詳しく知りたい人は先生の著書も参考にしてみて!

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「不妊治療を考えたら読む本 科学でわかる「妊娠への近道」 (ブルーバックス)
発行:講談社 (2016/7/20)
価格:900円(税別)
著者:浅田 義正, 河合 蘭

 

今回質問にお答えくださった先生

医療法人 浅田レディースクリニック
・浅田レディース品川クリニック
・浅田レディース名古屋駅前クリニック
・浅田レディース勝川クリニック

院長
浅田義正(あさだ・よしまさ)

 「患者さまがより早く治療を卒業し、子育てのステージに入ること」を重視し、時間を無駄にしない、痛くない、心にやさしい不妊治療を目指しています。」

医学博士
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医

 


 

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この記事のキュレーター

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