先進の医学で判明!○○が妊娠率に影響している!?

医学の進歩とともに、妊娠や出産のカラダのメカニズムが徐々に明らかになっています。それに伴い、不妊治療や不妊検査の技術も日々進化しています。 そこで今回は、現役医師の話を交えながら、「妊娠に関する耳寄りな情報」をお届けします!

不妊検査・不妊治療は日々進化中

現代の日本は人口減少に伴い、出産する女性自体は減少しています。

しかし、不妊検査や不妊治療のニーズは増加してきています。この背景には、女性の社会進出に伴う晩婚化や妊娠・不妊に関する知識の向上、助成金の充実などがあります。

また、芸能人が自身の妊活や不妊治療について発信するようになってきたことや、「妊活」という言葉もよく耳にするようになったことにより、妊娠を希望したときに「病院に行く」という選択をする心的ハードルも下がっているようです。

このようにニーズが高まりつつある不妊検査・不妊治療は日々進化を遂げています。 ある先進の不妊検査は、反響が大きく日本を含む世界70ヶ国、1,500以上のクリニックで導入されています。(2019年6月時点)

先進の不妊検査を導入したクリニックの1つである、神谷レディースクリニックの神谷医師によれば、「検査によって、適切な治療を行うことができるようになった患者様が多数いることを実感している」とのこと。 その不妊検査とは、一体どのような検査なのでしょうか。

先進の不妊検査とは?

先進の不妊検査の1つに

・子宮内の環境を調べる「EMMA(子宮内膜マイクロバイオーム検査)」「ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)」

・着床のタイミングを特定できる「ERA(子宮内膜着床能検査)」 という子宮内環境と子宮内膜に関する検査があります。

・子宮は赤ちゃんが育つ場所

・子宮内膜は、受精卵が着床する場所

であり、着床や妊娠の継続において、重要な役割を果たしています。 このように重要な役割を果たす子宮内環境や子宮内膜に関する検査について、さらに詳しく見ていきましょう。

子宮内の環境を調べる「EMMA検査」「ALICE検査」

EMMA検査・ALICE検査は妊娠を望むすべての女性におすすめの検査です。

なぜなら、EMMA検査では「子宮内膜に存在している菌を網羅的に調べ、子宮内でよい働きをする乳酸桿菌が生息しやすい環境であるか」を調べることができ、ALICE検査では「着床や妊娠の継続を阻害する要因となる病原菌」を特定することができるからです。

子宮内に乳酸桿菌が多いと着床率・妊娠率・出生率が高い

今まで子宮内は「無菌」と思われていましたが、近年の研究によって、子宮内には細菌が存在することが明らかになり、さらにラクトバチルス属という乳酸桿菌が90%以上あると、着床率・妊娠率・出生率が高いということがわかりました。

乳酸菌と妊娠率の関係を調査した研究では、「乳酸菌の少ない群の妊娠率は33.3%であったのに対し、乳酸菌が多い群の妊娠率は70.6%であった」と調べた人数は35人と少ないながらも大きな差がみられたということが論文で報告されています。 また、妊娠継続率や出生率にも差がみられました。(※1)

Moreno and Simon et al., 2016

しかし、このラクトバチルス菌は、ストレスや風邪などの体調不良、抗生物質の投与、ホルモンバランスの乱れなどによって、減少してしまうことがあります。

つまり、誰でも子宮内の乳酸桿菌が減少し、妊娠率や着床率が下がってしまっている可能性があるということです。

この子宮内でよい働きをする乳酸桿菌が生息しやすい環境かどうか、を子宮内膜に存在している菌の割合を細かく調べることで確認できるのが、EMMA検査の特徴の1つなのです。

妊娠を阻害する慢性子宮内膜炎を引き起こす菌がいる

ラクトバチルス菌は子宮内でよい働きをしますが、子宮内に存在する細菌の中にはし悪さをする菌もいます。

慢性子宮内膜炎は、着床障害や反復流産の要因となる疾患で、多くの場合、子宮内の細菌感染によって発症します。

また、発症しても、症状はなく、自分で気が付くことが難しい疾患です。

ALICE検査では、慢性子宮内膜炎を引き起こす病原菌として関係性のある10種類にターゲットを絞り、それらの菌が一定以上検出されるかどうかを調べます。

そして、もしある菌が一定以上検出された場合は、その菌に対応する適切な抗生剤を使って、治療を行うことができるのです。

先進の不妊検査によって子宮内環境を調べるメリットとは?

子宮内環境を調べるメリットは第一に、個人にあった治療を受けられるようになることです。

不妊の要因が不明なままの場合、手当たり次第に様々な治療にトライしていくことになります。 それが検査によって「子宮内のラクトバチルス菌の割合が少ない」「慢性子宮内膜炎の病原菌がある」など、不妊要因が一つでも特定できると、赤ちゃんを授かるために必要な、個人にあった適切な治療を受けることができるようになります。

第二に適正な抗生物質の使用ができるというメリットがあります。

「抗生物質」とは、細菌などの微生物の増殖を阻害する物質のことで、

・服用し続けると、細菌に耐性がついてしまい、効かなくなる恐れがある

・病原菌だけでなく、カラダに害のない菌まで排除してしまう可能性がある

という危険性も孕んでいます。 そのため、適切な使用が必要ですが、EMMA検査・ALICE検査が登場するまでは子宮内で悪さをしている菌を特定できなかったため、良い菌と悪い菌区別なく、強力かつ広域に作用してしまう抗生物質が使われていました。

その結果、抗生物質が効きにくいカラダになってしまったり、着床率・妊娠率の向上に寄与する乳酸桿菌までも消失させてしまっていた可能性もありました。

このような状況をEMMA検査・ALICE検査では改善したのです。

神谷医師によれば、「2018年8月から1年間、当院にて約100症例の反復着床障害、反復流産に悩んでいる患者様に検査を行なったところ、3割は検出された菌によって抗生剤治療を推奨されましたが、広域な抗生剤の推奨例はありませんでした。また、治療が必要と判断された症例でも乳酸桿菌の投与のみで子宮内環境の改善効果が期待できる症例が5割でした」とのことです。

不妊治療を続けているがなかなか結果が出ない、今後の妊娠に備えて自分の子宮内の状態を把握しておきたいという方は、EMMA・ALICE検査を一度受けてみるとよいでしょう。 (※EMMA検査の中にALICE検査が含まれます。)

着床の窓のタイミングを特定できる「ERA検査」

EMMA検査・ALICE検査はこれから妊娠を望むすべての女性が対象だったのに対し、ERA検査は、胚移植(体外で受精した受精卵が細胞分裂したのちに体内に戻す方法)を数回行っても、着床せず、妊娠成功に繋がらなかった人にとって有効な検査といえます。

というのも、ERA検査では最適な着床の時期である「着床の窓」を特定することができるからです。

従来の体外受精では、取り出した卵子と精子を体外で受精した後に、再度体内に戻すタイミングを排卵日から約6日目としていました。

しかし近年の研究から、最適なタイミングは±2日程度の個人差があるということがわかったのです。

つまり、

「Aさんは、5日目に受精卵を体内に戻したほうが良い」

「Bさんは、7日目に受精卵を体内に戻したほうが良い」

と着床の窓(最適な着床タイミング)には個人差があるにも関わらず、一律で約6日目に体内に戻していたために、受精卵には問題がなくても、体内に戻すタイミングに問題があり、着床できなかった可能性があるということです。

ERA検査では、患者個人の「着床の窓」を特定することができるため、個人差を考慮した最適なタイミングで受精卵を体内に戻すことができます。 実際にERA検査では、妊娠率が約25%向上したという臨床データが確認されています。(※2)

出典:ASRM Abstracts, Vol. 106, No. 3, Supplement, September 2016  (ClinicalTrials.gov Identifier: NCT01954758)

(※「個別化された胚移植」がERA検査によって、個人差を考慮した最適なタイミングで体内に受精卵を戻した場合の数値)

これまで胚移植を3回以上行っても、妊娠につながらなかったという方は、検査を受けてみてはいかがでしょうか?

妊娠を希望する女性への医師からのメッセージ

「様々な検査をしたけれど不妊の原因を特定できなかった」という方にとって、医学の進歩に伴い新たな原因が1つでも多くわかると、妊娠に向けての治療も前向きに捉えられるのではないでしょうか。

ERA・EMMA・ALICE検査によって原因が判明した場合、適切に治療することで妊娠率の向上につながる可能性があります。

また、ERA・EMMA・ALICE検査3つがセットになったEndome TRIO(エンドメトリオ)という検査セットも提供されており、1回の検体採取で3つの検査すべての結果を得ることができます。 妊娠にお悩みを持っている方は、ぜひ一度担当医にご相談してみてください。

<取材協力> 神谷レディースクリニック

住所:札幌市中央区北3条西2丁目2-1 日通札幌ビル2F

HP:https://kamiyaclinic.com/

神谷博文先生 札幌医科大学卒業。 1998年神谷レディースクリニックを開業。 岩見菜々子先生 札幌医科大学卒業。 日本産婦人科学会認定専門医。

※1 Evidence that the endometrial microbiota has an effect on implantation success or failure, Moreno and Simon et al., 2016

※2 ASRM Abstracts, Vol. 106, No. 3, Supplement, September 2016  (ClinicalTrials.gov Identifier: NCT01954758)

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この記事のキュレーター

ルナルナ編集部と生殖医療サービス専門の遺伝子検査会社「アイジェノミクス・ジャパン」が、妊活・不妊治療をサポートする最新情報をお届けします!


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