セックスのゴールは? 排卵日は狙う? 実は知らないことだらけ、セックスの流れと男女の体のサインを知る

カラダのこと、セックスのこと、オトナになっても実は知らないこと、人には聞きづらいことってありますよね。「自分の性器のカタチは人と違う?」「体毛が濃いのはホルモンのせい?」――いまさら誰にも聞けないさまざまなお悩み。
今回は、「ここだけは知っておこう!妊活のためのセックス」。
ポイントは、『妊活にこだわらず、セックスを楽しもう。パートナーへの思いやりも忘れずに』。産婦人科医の宋先生と泌尿器科医の小堀先生の回答をお届けします。

監修

小堀善友 先生

PROFILE:泌尿器科医。プライベートケアクリニック東京 東京院・院長。 金沢大学医学部卒業。専門は男性不妊(とくに射精障害)、性感染症。BuzzFeedJapanなどのメディアで間違ったマスターベーション防止の啓蒙活動も行う。著書に『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)。プライベートでは4人の男児のパパ。

宋美玄(そんみひょん) 先生

PROFILE:産婦人科医。性科学者。ロンドンで胎児超音波の研さんを積み、2017年に丸の内の森レディースクリニックを開院。産婦人科診療やカウンセリングを行う一方で、メディアで女性の体や性生活、妊娠・出産等について情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちいいセックス』(ブックマン社)。2児のママとして育児に奮闘中。

「大人になるまで誰にも聞けなかったオトナ女子×オトナ男子のカラダの悩み診察室」 #3
※参考:「妊活たまごクラブ 2024-2025年版」

排卵日を狙ったピンポイントのセックスにこだわらない

■宋先生:
「妻だけED」という言葉があるように、妻に「今日、排卵日なの」と言われた瞬間にセックスができなくなる男性の話をよく聞きます。男性は副交感神経が優位のときに勃起するので、緊張すると勃起しづらくなるんです。妊活する前まではセックスは楽しかったのに、排卵日を意識しすぎることで義務的になってしまう。そんなの全然楽しくないですよね。妊娠にこだわらずに、セックスは2人が盛り上がるタイミングで楽しめばいいのでは?

日常では欲情しづらい。外泊や楽しみなどイベントを用意するのも大事

■宋先生:
特定のパートナーに対する性欲は、基本的に「消耗品」です。家族として毎日過ごす家では盛り上がらないのであれば、シチュエーションを変えてみるのがおすすめです。また、長くセックスパートナーとして付き合っていくなら、あうんの呼吸に頼らずに、お互いの好きなプレイやシチュエーションをすり合わせておきましょう。

■小堀先生:
患者さんにもよく言っているのですが「欲は治せない」んです。お互いの欲の強さやタイミングにアンマッチがある場合、話し合ってすり合わせていくしかないですね。必ずしもセックスのゴールは挿入や射精だけではありません。セックスの目的が親密性を高めることであれば、ハグなど他の行為で補えることもあると思います。

気持ちが盛り上がっていなければ女性にとってセックスは「痛い」のです。

■宋先生:
女性の気持ちが盛り上がっていなければ、基本的に挿入は痛いものです。男性の場合は、興奮すると勃起をするので一目瞭然ですよね。でも、女性はそうではありません。脳が興奮すると女性器に血がたくさん流れて変化が起こり、腟の壁から愛液と呼ばれる分泌物が染み出してきます。こうしてペニスを受け入れる準備ができます。

■小堀先生:
男性はこうした女性の特徴を知り、一人よがりにならず、相手の変化を感じながら挿入に移ることが大事です。また、「強く」「速く」動かすことで女性が喜ぶという誤解が痛さの原因になっていることも。大切なのは、「ソフトな刺激」と「一定のリズム」なんですよ。

セックスのゴールは「射精」「オーガズム」とは限らない

■宋先生:
セックスに正解はありませんし、何をゴールにするかは人それぞれです。妊娠とセックスを切り離して、セックスだけを楽しんでもいいと思いますよ。マスターベーションで採取した精子をシリンジで腟に挿入する方法や人工授精もあります。「こうでなければならない」というハードルはどんどんなくしていきましょう。

■小堀先生:
セックスには「快楽のため」「生殖(妊娠)のため」「連帯のため」という3つの要素があると言われています。何を重視するかは、置かれた状況や年齢によっても変わってきます。挿入や射精、オーガズムにとらわれすぎずに、2人にとってベストと思えるセックスを楽しんで欲しいと思います。

思うように妊娠しない場合、男性側に原因があることも

不妊原因の男女比
WHO(世界保健機関)調べ

■小堀先生:
不妊の原因の半分は男性にあると言われています。精液中にまったく精子がない「無精子症」、精液中の精子が基準値(1mlあたり1600万個)より少ない「乏精子症」、精子の運動率が低い「精子無力症」などが主な原因です。最近では市販の検査キットもありますし、婦人科や泌尿器科で気軽に精子の数や運動率を調べることができます。妊活を始めるときには、男性もぜひチェックしてみてください。

勃起障害、射精障害は医師に相談で改善できることも多い

■小堀先生:
精子の病気以上に最近多くなっているのが、勃起障害や射精障害です。勃起障害はバイアグラに代表されるED薬ですぐに改善できます。射精障害の多くが、女性の腟の中で射精できない腟内射精障害です。心因性の場合もありますが、間違ったオナニーによる場合が多く、すぐに性習慣を改める必要があります。カウンセリングや薬物治療でも改善できますので、思い当たる症状がある人は、クリニックで相談してみてください。

【結論】オトナになっても自分の体は知らないことだらけ。こんなときに受診のススメ!

■宋先生:
生理痛が重い、性器に痛みやかゆみがあるなど、不調があっても誰にも言えずに悩んでいませんか? 妊娠を望むならなおさら、放置せずに受診してくださいね。SNSの情報をうのみにせず、日本生殖医学会のホームページなど、信頼できるサイトから正しい知識を身に着けてほしいと思います。

■小堀先生:
自分の体のことでも疑問が多いのに、相手の体はさらに知らないことが多いですよね。自分だけでなく、相手の体のしくみを知ることで、より自分たちらしい妊活ができるはずです。悩みは抱え込まずに、ぜひ医師に相談してください。妊娠を望む場合、男性も体の悩みは早く解決しておきましょう。

セックスの流れと男女の体のサイン

男女それぞれの状況を解説します。

[1段階]興奮期

<キス・抱き合う>
●男
女性の生足や体のくびれラインなど男性は主に視覚からの刺激で興奮し、性欲のスイッチが入ります。男性が興奮期に入ったかどうかは一目瞭然で、ペニスが勃起します。

●女
女性の場合は愛情表現の上に性欲があるので、じっくりと皮膚や体の刺激を受け徐々に気持ちが高まります。興奮すると腟の壁から愛液とも呼ばれる分泌液が染み出してきます。

[2段階]高原期

<気持ちがさらに高まる・挿入へ>
●男
勃起して刺激を受けると、尿道から弱アルカリ性の「カウパー腺液」という、サラサラと透明な分泌液がにじみ出てきます。弱酸性の腟内で精子が死なないよう腟内を中和します。

●女
女性器が赤みを増してふっくらとふくらみ、少しずつ腟口が広がっていき、男性器を迎え入れる準備が整ってきます。いよいよ女性器はペニスの挿入を受け入れることができます。

[3段階]オーガズム

<挿入・持ちが良くなる>
●男
ペニスは腟の中の気持ちよさと女性器の収縮による摩擦で射精の衝動を抑えられなくなり、尿道から精液が吐き出されます。男性のオーガズムはこの数秒で終わってしまいます。

●女
女性の体内では骨盤底筋群が緊張を始め、子宮と腟、肛門括約筋が約0.8秒に1回のリズムでけいれんし、収縮は全身に広がり、やがて絶頂期を迎えます。

[4段階]消退期

<余韻にひたる>
●男
射精から1分もたてばペニスから血液が引き上げます。勃起がおさまり、ペニスはほどなく普通サイズに戻ります。男性はこのあと「無反応期」といってまったく性的反応が起きなくなります。

●女
オーガズムが終わってからは女性器に流れ込んでいた血液がすっと引き、ふっくらと厚ぼったくなっていた性器も元の状態に戻ります。

宋美玄先生【診察室からメッセージ】

宋美玄先生【診察室からメッセージ】

●情報に頼りすぎず、自分をよく知って

最近では、スマホアプリに頼っている人が多い印象です。
生理日を入力すると排卵日を教えてくれますが、本当に排卵しているかは、基礎体温や検査でなければわかりません。また、排卵日当日にセックスをすれば妊娠できると思っている人が多いのですが、排卵してしまうと妊娠できないので、排卵日の2~3日前にセックスするほうが確率は高くなります。自分のカラダを正しく知り、正しい知識を持って妊活にのぞんでほしいと思います。

小堀善友先生【診察室からメッセージ】

小堀善友先生【診察室からメッセージ】

●男性の妊活への関心が高まっています

自分の精液の状態を知るために、検査に訪れる若い人が増えています。
不妊の約半数は男性に原因があるといわれていますので、男性の妊活への関心が高まり、以前に比べて気軽に検査ができているのはよいことだと思います。
一方で、ED(勃起障害)治療薬の副作用が心配で、勃起障害に悩み続けている人もいます。
バイアグラなどのED治療薬は、副作用の心配はほとんどありません。正しい知識があれば、解決できる悩みも多いと思いますよ。

●監修/小堀善友 先生
●撮影/鈴木江実子
●イラスト/KAZMOIS
●取材・文/尾越まり恵

※記事掲載の内容は2024年2月25日現在のものです。以降変更されることもありますので、ご了承ください。

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この記事のキュレーター

妊娠・出産・育児の総合ブランド「たまひよ」。雑誌『妊活たまごクラブ』『たまごクラブ』『ひよこクラブ』を中心に、妊活・妊娠・出産・育児における情報・サービスを幅広く提供しています。


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