ご懐妊!! 第8話 八ヵ月

OLの佐波は、苦手な超イケメン鬼部長・一色とお酒の勢いで一夜を共にしてしまう。しかも後日、妊娠が判明!
迷った末、彼に打ち明けると「産め!結婚するぞ」と驚きのプロポーズ!?
仕事はデキるけどドSな一色をただの冷徹上司としか思っていなかったのに、家では優しい彼の意外な素顔に佐波は次第にときめいて…。
順序逆転の、運命の恋が今始まる!

妊娠八ヵ月(二十八~三十一週目)
胎児(三十一週末)…四十センチメートル、千五百グラム
子宮の大きさ…二十五~二十八センチ

 

「はい!それではマタニティビクスのレッスン、本日はここまでになります!ありがとうございましたぁ!」

枝先生の元気な声とともにレッスンが終わる。土曜日のマタニティビクススタジオ。

はー、今日もいい運動になりました!

私と美保子さんは丸いお腹を並べて、マットで着替え始める。

「一色さん、樋口さん、おふたりとも調子はいかがですか?」

汗を拭きながら、枝先生が話しかけてきた。私は顔を上げる。

「だいぶ、お腹が重くなってきました」

二十八週一日。ポンちゃんは八ヵ月に入った。昨日の検診では、体重は九百八十グラム。私の体重もここにきてプラス六キロだ。

「赤ちゃんがぐっと大きくなる時期が来ましたね。おふたりとも、ここにいらしたときはまだお腹が小さかったのに、早いなぁ!」

枝先生は感慨深そうだ。美保子さんがおっとりと笑う。

「おかげさまで、ビクスの動きも少し慣れました」

確かに!あれほど珍妙な盆踊りを演じていた私も、気づけば他の妊婦さんたちと遜色なく動けるようになってきた。

ああ、一時はどうなることかと思ったけど、続けることって意味があるのね。

「おふたりとも、すっかりベテランの風格ですよ。そうそう、三十週前後は張りを感じやすい時期ですから、張りが強いときは無理をせずに過ごしてくださいね」

「はーい」

私も美保子さんも、小学生のようにいいお返事。

「あ、先生。ビクスはいつまでやっていいんですか?」

私が聞くと、先生はニコッと微笑んだ。

「ご出産当日までどうぞ。この産院なら入院日まで受けられます。他院のおふたりは陣痛が始まるまでOKです」

マ、マジですか。

でも確かに先輩妊婦さんには、確実に臨月の人がたくさんいるもんなぁ。

 

 

ランチをして、美保子さんと買い物をして帰った。

入院バッグの準備も兼ねて赤ちゃんグッズの量販店に寄ってきたのだ。

「ただいまぁ」

「おう、おかえり」

部長はソファでくつろいでいる。

夕飯の準備の前に、私はソファの隣にちょこんと座ってみる。

「見てください」

戦利品の哺乳瓶を早速見せると、彼は興味深そうに眺めてから、一度テーブルに置いた。

それから、私のお腹を触る。

「ポンにおかえりって言ってなかった。おーい、ポン、お出かけは楽しかったか?」

ポンちゃんはパパの声に反応して、お腹の中でぐるぐる動いている。

といっても、もう回転できるほどスペースはないだろうけど。

「ポン、動いてるぞ」

「パパに甘えてるんですよ。すでに女子力を発揮して、悪い女」

「おお、いいぞ。存分にパパに媚(こび)を売るがいい」

部長が嬉しそうに笑っていると、私も嬉しい。

思いきって、だいぶ思いきって、私は彼の肩に頭をもたせかけてみる。

「甘えてんのか?」

部長が少し意地悪く聞いてくる。

私はツーンと答える。

「別にー。ちょっと疲れただけです」

すると彼が、お腹に当てていた左手を私の頭に移動させた。

くりくりと手で髪を交ぜてくる。

「じゃあ、少し休んでけ。

台所に立つのが苦しけりゃ、外に食べに行ってもいいぞ」

「へへへ」

私は気持ち悪く笑って、部長の肩に頭を載っけ直す。

部長、優しいんだ。この前の出血のときも、すごく頼りになったし。

妊婦をキュンキュンさせて、困った男だよ。褝くんは。

「ちゃんと夕飯は作りますよ。リクエスト受付中」

「なんでもいい、っていうのは困るんだったよな。じゃあ、オムライスで」

彼が子ども舌なのもあるけど、たぶん買い物に行かなくていいメニューをチョイスしているんだろう。

やっぱり、うちの旦那さんは優しい。

「時間に余裕あるし、もうちょっとこうしてよーっと」

私が言うと、部長はテレビのリモコンを取ってくれた。

「この前、録画してたドラマ観てからにしろよ。のんびりやってくれ」

では、お言葉に甘えまして……。

土曜日の夕方はのんびりと過ぎていった。

 

 

ゴールデンウィークが迫るある日、私は部長と大がかりな買い物に出かけた。

出産用品、そして育児用品の買い出しだ。

ベビー服はプレゼントで結構もらっているけど、今日の買い出しは実用的で絶対にいるものメイン。

やってきたのは、有名量販店のベビー本舗!

「メモを読んでくれ」

部長が広い店内を見渡しながら言った。

そうだね、計画的に回らないとね。

「えーと、大きなものはベビーベッド、赤ちゃん用布団、チャイルドシート」

「ベビーカーは、すぐには買わないんだな?」

「はい。美保子さんと海外製のものを下見してからにしようかと。すぐに使うものではないですし。抱っこ紐もまだ検討中です」

「わかった。じゃあ、ベッドから見よう」

私たちは店内を精力的に歩き回った。

ベビーベッドはシンプルなもの、布団は防ダニ加工のもの、チャイルドシートは新生児から長く使えるものを選ぶ。

あと、大きなものといったらベビーバスなんだけど、ビニール製の空気で膨らませるタイプを手に取る。

新生児の一ヵ月間しか使わないし、プラスチックのものはかさばり率ナンバーワンらしいから。

さあ、次は細かいものだ。

新生児サイズのオムツやお尻拭き。

母乳の予定だけど、念のため粉ミルクや哺乳瓶の洗浄セット。

お産用に産褥パンツと産褥パッド。

大きなパッドや、産後すぐの骨盤ベルトは病院でくれるって言っていた。

リフォーム下着って、いるのかな?これも美保子さんと相談だな。

母乳パッドとおっぱいのケアクリーム。

和泉さんが『ケアクリームはいる!』って言っていたし、ついでに妊娠線予防クリームも買っちゃえ。

「買おうか迷ったら、来月号の『エッグ倶楽部』で〝買ってよかった育児グッズ百選〟という特集がある。それを見てから考えよう」

部長が冷静に言う。この人、研究好きだよな……。妙に感心してしまう。

そして、お待ちかねがポンちゃんの洋服だ。といっても今日買うのはウェアじゃなくて肌着。

夏産まれになるので、短肌着が便利らしい。

これは、ビクスの枝先生が言っていた。

妊婦力の低い私だって、情報収集はしているのだ。

短肌着と、股にボタンのついた長めのコンビ肌着を六組買う。

足りなかったら、部長に買いに行ってもらおう。

あとは、可愛くてついつい買ってしまったのが、カボチャブルマとレッグウォーマー。

ブルマをはいた女の子って可愛いじゃない。

最後に、産院で用意の指定があったガーゼのハンカチ三十枚セットをカゴに入れて、終了!

「結構買ったな」

「本当に」

車のトランクと後部座席いっぱいの荷物に、思わず嘆息してしまう。

家族がひとり増えるって大変なことなのね。あらためて実感する。

 

 

帰ってすぐに、入院バッグをまとめることにした。

産院のチェックリストに沿って、一泊用のボストンバッグに入れていく。

「ポンの服は、退院着以外いらないのか?」

部長がコーヒー片手に私の仕度を覗き込む。

「入院中は貸してくれるみたいです。私のパジャマも。便利ですよねー」

「で、ポンの退院着は?」

私は自分用のジャージ素材のワンピースをしまいながら、彼を見る。

「今度、美保子さんと買ってきます。セレモニードレスっていう、白のピラピラお洋服を着せる手もあるらしいんですけど、普通の可愛いロンパースのほうが子どもらしくていいかなあって」

「なるほどな。じゃあ、ポンの美貌が引き立つやつを選んでやってくれ」

「美貌って……」

部長、本当は一緒に洋服を買いに行きたいのかな。

別の機会にふたりで見に行こうかな。デートも兼ねて。

そのとき、玄関のチャイムが鳴った。

インターホンに出た彼が、「荷物だ」と玄関まで取りに行く。

部長が重そうに持ってきた段ボール箱は、うちの実家からだ。

開けてみると、たくさんの野菜。こんにゃく。そして白い箱?

「あ!」

「おお!」

箱を開けて、私たちは同時に声を上げた。

中から出てきたのは、真っ白なレースが眩しいセレモニードレス……。

今、いらないって話をしていたばっかりなのに。

「もー!買うならひとこと、言ってよ!!」

そこそこ値が張って、持て余しそうなものをもらったときほど、困ることってない。身内からなら余計にだ。

「まあまあ。お義母さんも、言えばおまえが遠慮すると思ったんだろ。いいじゃないか、退院にもお宮参りにも使えそうで」
部長が私をなだめる。

「でも、万が一かぶったらとか……考えないんだろうなぁ。あの天然母……」

「俺はお義母さんののんびりしたところ、好きだぞ。天然くらい許してやれ」

そういえば、うちの母からはしょっちゅう荷物やら電話やらが来るけど、部長のお母さんからは電話も手紙も来ない。

彼はあまり話したがらないけど、もしかして病気が相当悪いのかな。

それとも、本当は私たちの結婚をよく思っていなかったりして。

どちらにしろ、孫が産まれるわけだから、どこかでお会いしたいんだけどな。

そんなことを考えつつ、入院バッグを作り終えた。

二、三の足りないものはおいおい揃えるとして、ひとまずバッグを玄関横の物入れにしまう。

いざ、病院!となったときに持ち出しやすいようにね。

「はー、あとは出産を待つばかり!……って、あと二ヵ月以上ありますけどね」

「なんかおまえ、遠足前の小学生みたいだぞ」

「うーん、ワクワク度は近いかもしれないです」

同時に恐怖も、ひたひたと近づいてくる気がする。

あとは、秘密裏に進めているスタイの作成さえうまくいけば、ばっちりだ。

ゴールデンウィークは、部長は社長とゴルフ旅行だし、その隙に作ってしまおう。

作成途中を見られると絶対に茶化されるので言わない。

できたものをそっとつけて、いいママアピールをするのだ。

野望を胸に秘め、ふふふと笑った。部長が変なやつを見る目で見ていた。

 

 

妊娠後期になると、検診は月二回に増える。

「では、よろしくお願いします」

産院の処置室で向かい合うのは私と、ツンツン助産師、時田さん。

今日は二回目の八ヵ月検診。バースプランを決めることになっていた。

「あらためまして、バースプランはどんなお産がしたいかという要望書、計画書です。

当院の設備上、またお産の進行上、百パーセント叶えられるものではないことはご了承ください」

事務的に言う時田さんに、『はいはい、了解ですよ~』的な笑顔で答え、書いてきたバースプランを手渡す。

私の要望は三つだ。

普通分娩。

立ち会い出産、夫。

カンガルーケア。

「まずは、分娩は普通とのことですが、分娩台に乗るスタイルでよろしいですね。当院は和痛、無痛、フリースタイルは行っていないので、必然的にそうなるのですが」

「はい!普通に産みます」

私は元気よく答えた。

「ご主人は、最初から最後まで立ち会われるんですね」

「その予定です。仕事中であれば、最初は少し遅れるかもしれませんが。……一部立ち会いってあるんですか?」

「たまに、ありますよ。ご主人様が血が苦手で、最後はご遠慮されるケース。妊婦さんのご希望で、苦しんでいるところは見られたくないので、いよいよまで呼ばないでくださいというケース」

「ははぁ」

私は頷く。部長は私がなにを言おうと絶対、最初から最後までいるだろうな……。

「次はカンガルーケアですが」

「はい。夫が、やったほうがいいって」

カンガルーケアっていうのは、産まれたばかりの赤ちゃんが、ママの素肌にくっついて少しお休みするっていう素敵なイベント。

事故の報告もあるけれど、母子の最初の触れ合いとして推奨している産院はたくさんある。

「当院でも推奨しています。ただ、赤ちゃんの状態やママの状態によっては、できない場合がありますので、ご理解ください」

なるほど。あくまで、ポンちゃんも私も万全でないとできないことなのね。

「では、ここから細かい部分や追加したい要項を伺っていきます」

時田さんはボールペンをカチッと押し出し、私のバースプラン用紙に書き込む準備。私はワクワクと再び頷く。

「まずは陣痛促進剤ですが、状況によっては使用可能でよろしいでしょうか?」

「それは、赤ちゃんがなかなか産まれない場合ですよね」

「そうですね。長引く場合は、母子の安全のために使いたいと思っています。極力なしで、どうしてものときだけ使用ということもできます。その際は、一色さんご本人に確認もします」

あ、割と臨機応変に対応してくれるのね。

「じゃ、それで」

「会(え)陰(いん)切開については、いかがですか」

「会陰切開?」

知らない単語が出てきて、オウム返しする。

やっぱり私も『エッグ倶楽部』を熟読したほうがいいのかな。

「会陰切開は、あらかじめ膣の出口から肛門までの間をメスで切開し、赤ちゃんを出しやすくすることを言います」

「えぇー!切るんですか!?」

思わぬ回答に私は叫んだ。

痛い思いをして産むのに、さらにそんなところを切るなんて!!

「会陰部分は不随意筋といって、自分では動かすことができない筋です。ゆえに、鍛えたり伸びをよくしたりすることが難しいんです。裂けてしまうと治りも悪く、感染症の危険もあるので、一応切開はお勧めします」

裂ける……。はい、もっと怖い単語が出ましたよ。

人体がすさまじい力でメリメリッと裂けるわけだ。なにそれ、恐怖しかない……。

「あの……、切らなくていいケースもあるんですか?」

「ありますよ。伸びのいい会陰であれば、切らなくて済みます。事前にオリーブオイルでマッサージする方もいるようです」

よ、よし!それ調べてみよう!

「じゃあ、これも〝極力なしで、どうしてものときだけ〟って方向で」

「わかりました。ちなみに対応できることであれば、バースプランはご出産中でも変えられますので」

出産中に変更できる余裕があるのか、おおいに不安であります。

うぅー、怖い。切りたくないなぁ。あ、切るといえば……。

「あの、緊急帝王切開になる場合もあるんですよね」

「お産の進みによってはあり得ます。その際は一色さんとご主人にご説明し、了承を得てから処置になります」

「それって、どんなときですか?」

だって、心の準備をしておきたいじゃない?

出口を切るだけで怖い私が、突如ハラキリになったら、パニック必至だよ。

「お産がなかなか進まず、母体の衰弱が著しい場合や、胎児の心拍が下がってきて危険な場合は、帝王切開に切り替えることがあります」

時田さんには日常茶飯事のようで、相変わらず淡々と説明してくれる。

「また、赤ちゃんは自分で回転しながら出てくるのですが、回転方向を間違える児頭回旋異常の場合も、帝王切開になることがありますね。その他にも、胎盤の剥離や妊婦さんの血圧異常などありますが、すべては母子の救命のため行われることですので、ご理解いただきたいです」

胎盤の剥離。この前、天地さんに聞いた時田さんの経験が蘇る。

そうだ、なにが起こるかわからないのがお産だ。痛いの、怖いの言っている場合じゃない。気を引きしめ直さなきゃ!

「他に、なにかご要望はありますか?」

「えーと、私は特にないんですが……みなさんはどんなご要望を言うんですか?」

「そうですね。よくあるのは、へその緒のカットです。立ち会われたご主人や、上のお子様がカットすることは当院でも可能です」

「うわぁ」

想像するとちょっと怖くて、思わず顔を歪めてしまう。それは、部長に聞いてみてだなぁ。

「また、ムービー撮影もよくお話に上がります。妊婦さんの頭の方向からのみ、撮影を許可しています」

またしても目が点になってしまう。

どっ、動画に残したい人がいるの!?見栄っ張りの私には絶対無理だ。

感動とかの前に、切られたり痛がったりしている私が映っているわけでしょ。そんなの恥ずかしすぎる!

「先日、実際あったんですが、ムービーに先生と助産師のインタビューをつけると張り切るご主人がいらっしゃいました。産後すぐに処置をする助産師や先生を追い回して、奥様から怒鳴られていました」

あらら……。自分の子の出産は特別かもしれないけど、盛り上がりすぎは注意だなぁ。

部長は大丈夫かな。ちょっと心配なところがあるぞ、あの人。

「変わったところでは、胎盤を持ち帰るのでくださいというのがありました」

「へ?なにに使うんですか?」

「地方によっては、食べる風習があるそうです」

時田さんは表情ひとつ変えずに言った。私は衝撃で言葉が出ない。

すごい。まさに、ところ変わればだわ。想像つかない……。

いろいろ聞いてみると、私のバースプランって超普通かもと思えてくる。でも……。

「うーん、なんか……これでいいです」

「はい、わかりました。変更があれば、いつでもおっしゃってください」

時田さんはいつもの口調で言い、ボールペンの先を引っ込めた。

よし!とりあえずバースプラン完成!

どんと来い、出産!

 

 

検診を終えて、ひとりランチをして、会社に向かう。

玄関フロアのエレベーターの前に見たことのある後ろ姿を見つけた。

「社長!おはようございます!」

「あれ?佐波くん、今、出社かい?」

外丸社長が振り向いて笑顔を見せた。

「今日は検診で。午前半休をもらいました」

「そうかぁ。あ、お昼は食べた?」

「はい、今さっき」

「じゃあ、コーヒー……は飲まないよね。お茶に付き合ってくれないかな」

思わぬ誘いだ。なんだろう?

部長にとって社長は親代わり。

私は息子の嫁同然。ポンちゃんは孫同然だよね。

妊娠経過報告には、ちょうどいいかもしれない。

「はい!お供します」

私は元気に返事をして、社長について玄関に逆戻りした。

 

 

社長と入ったのは近所の古びた喫茶店で、常連客だけの店内は昼時でも席が空いていた。

私はアイスミルク、社長はアイスコーヒーを注文する。

社長とふたりきりなんて初めてだから、少し緊張しちゃうな。

「体調はどうかな?」

「元気、元気ですよ~」

胸とお腹を張った。堂々としたお腹を見て、社長が笑う。

「本当に元気そうだ」

「ごはんはおいしいし、割と動けるし、いい調子です。悩みといったら、明け方にたまに足がつるくらいです」

「わあ、痛そうだね」

「私が『痛ーっ!』って叫ぶたび、ゼンさんが起きてくれますよ。『何事だー!』って」

社長がさらに声を上げて笑った。

「ゴールデンウィークはすまなかったね。僕の私用でゼンを連れ出してしまった」

ゴルフのことだ。私は内緒でスタイが作れてよかったですよ。

「そんなぁ、お気になさらないでください!私も久しぶりに、ひとりの時間を満喫できました」

「でも、身重のきみがいるって知りながら」

「ゼンさんは結構真面目なので、子どもが産まれたら、余計にどこにも出なくなりそうです。社長、よろしければ産後もゼンさんをお供させてやってください。私も羽を伸ばしたいですし」

社長がまた笑った。それから優しく目尻を下げて言う。

「きみを見ていると、どうしてゼンがきみを選んだかよくわかるよ。朗らかで明るい空気をくれる。あいつは変わり者だから、きみみたいな女性が必要なんだと思う」

いえいえと、顔の前で手を振った。

照れるなぁ。でも、部長とのこと、そんなふうに言ってもらえると嬉しい。

「佐波くんは、あいつの母親に少し似てるよ」

私は照れ笑いを消した。社長は、部長のお母さんのことを知っているんだ。

少し悩んでから、質問してみる。

「社長、私まだ、ゼンさんのお母様にお会いしてないんです。彼もご家族のことになると口が重くて……軽々しく会いたいとも言えないでいるんです」

「……そうか。佐波くんに話していないのか」

社長が呟くように言った。それから、私をじっと見つめる。

「僕はゼンが大学生の頃から知っている。僕がちょうど前職の代理店から独立を考えていたときに、あいつはインターンシップで来ていた。生意気で頭が切れるガキでね」

社長は語りだした。

「あいつが『役付きなら入社してやる』って偉そうなことを言うから、本当に部長職を用意してやったんだ。結果はよかったと思っているよ。あいつのおかげでうちは大きくなったからね」

役付きなら、って……なんだか想像がつく。偉そうな大学生の部長が。

「ゼンの母親とは、大学の卒業前に挨拶に行って会ったんだ。せっかく息子を有名大学に入れたのに、名もない新規事業に引っ張り込まれたら、普通の親は面白くないだろう?そのお詫(わ)びにね。ゼンの母親は明るくてさっぱりとした人だった。僕とそう年も変わらなくてね」

社長はなるべく言葉を選んで喋っているようだった。

核心部分を自分が言ってはいけないと思っている様子だ。

「ゼンの母親は、すでに発病していた。初期段階で本人も元気だったけれど、ゼンの心には、どこかで母親の元に戻ってやりたいという気持ちがあったみたいでね。僕は挨拶に行くことで、それを断ち切らせてしまった。あいつの母親もまた、『私のことは気にせず、東京でやりたいことをやりなさい』なんて発破をかけてくれた」

社長の瞳がわずかに陰った。

口調が重いのは、彼が他人事とは思っていない証拠だ。

「それから十年と少し。ゼンの母親の病はだいぶ進んだようだ。実はあいつの叔父さんとも連絡を取っていてね。つい先日も、具合があまりよくないと連絡をもらったばかりだった。ゼンにも連絡しているようなんだが……」

それで、社長は私をお茶に誘ったんだ。なにか聞いていないかと思って。

でも私はなにも知らないし、部長はそんなことは欠片も態度に見せていない。

どうして言ってくれないんだろう。私は彼の妻なのに……。

「佐波くん」

社長が私の名を呼び、私は自分が知らずに俯いていたことに気づいた。弾かれたように顔を上げる。

「ゼンがきみに言わないのは、身重のきみに負担をかけたくないからだと思うんだ。あいつなりにいい時期を考えているんだと思う。だけど」

彼は言葉を切った。それから、ゆっくりと私の手の甲に自らの手を重ねた。

「あいつのことを頼みたいんだ。あいつは母親を置き去りにしている罪悪感で、会いにも行けないし、きみにも言えなくなっているのかもしれない」

私は眉根を寄せ、再び俯いた。

私なんかに、彼をどうこうできる力があるとは思えなかった。

事故みたいに結婚して、子どもを迎えようとしている私たち。

それなりに絆は生まれてきている。

でも、彼が大事にしている部分に私が踏み込んでいいんだろうか。

彼を嫌な気持ちにさせてしまわないだろうか。

「なにをしてほしいわけでもないんだ」

社長が続けて言う。

「あいつの本心に寄り添ってやってほしい」

私は理解を表すために頷いた。頭の中で煩悶は続いていた。

 

 

その晩、二十三時近くに部長が帰ってきた。

「ごはん、なにか作りますか?」

「いや、いい。おまえも起きて待ってなくていいんだぞ。腹もでかくなって疲れやすいだろう」

私は首を横に振り、お茶を淹れるために電気ポットのスイッチを入れた。

ふたり分のほうじ茶を用意すると、ソファに腰を下ろす。

上着をかけ、部長が私の隣に座った。

「今日は暑いな」

「初夏って感じになってきましたね。窓、開けましょうか?」

「いーから、ちょこちょこ動くな。のんびりしてろ」

彼は押しとどめるように私のお腹に手を当てると、そのまま撫で始めた。

ポンちゃんが気配を察したのか、キックで応戦する。

「おー、元気だな。ポン」

部長が微笑む。いいタイミングかもしれない。私は思いきって口を開く。

「部長のお母さんのお見舞いに行きませんか?」

彼が黙った。数瞬の沈黙を挟んで、言う。

「社長から聞いたのか?」

「お加減があまりよくないと聞いただけです」

「あのジジイ、余計なことを」

部長が小さく悪態をついた。

「今日明日に死ぬような病気じゃない。妊娠中のおまえを連れて、わざわざ会いに行くことはないんだ」

「私は平気です。妊娠経過も順調ですし、名古屋までなら日帰りだって行けます。部長が顔を見せたら、お母さん、喜ぶんじゃないですか?」

「……どうせ、見たって俺の顔もわからないさ」

彼は自嘲気味に呟いた。それから、話を打ち切って立ち上がろうとする。

「待ってください!!」

私は部長の手首を掴んだ。

私の口調と手の力が、存外強かったせいだろう。部長は驚いた顔をして、動きを止めた。

「私は部長のお母さんにお会いしたいです」

勝手な言い分かもしれない。

彼の心に土足で踏み入っているかもしれない。

疎(うと)ましく思われてしまうかもしれない。

でも、家族なんだ。私と一色褝は家族なんだ。

「部長のお母さんは、私のお義母さんです。どうしても、ポンちゃんが産まれる前に会っておきたいんです」

部長はしばらく黙っていた。俯き加減に目を逸らして。

今日はもう答えが出ないかもしれない。私は沈黙を見守る。

「わかった」

ずいぶん経って、部長は呟いた。

声の調子が変わっていたので、彼が気持ちを固めたのがわかった。

部長は私の手を手首から剥がすと、ぎゅっと握り返して言った。

「今週末、会いに行こう」

 

 

部長の愛車が東名(とうめい)高速を走る。

土曜日の朝、私たちは混雑を避けて早めに出発した。

西の空に雲が広がるけれど、天気はさほど悪くはない。

崩れるとしたら夜以降だと、昨日の天気予報では言っていた。

コンビニのドリップコーヒーを飲みながら、部長は運転している。

お互い口数は少なく、気詰まりではなかったけれど、私はひとり緊張していた。

部長のお母さんに、私たちは会いに行くのだ。

お土産は部長の指示で、叔父さん宅の分しか用意していない。お母さんの分はいらないと言うのだ。

もしかすると、病状は深刻なのかもしれない。部長は『俺の顔もわからない』と言っていた。

でも、私はこっそりお母さんにスカーフを用意している。

もしものときは、病院の看護師さんにことづけて使ってもらってもいいし。

「まずは叔父の家に寄って挨拶する。母親のところはそのあとだ」

「病院はお近くなんですか?」

「……車で二十分くらいだ」

妙な間を挟んで、部長は答えた。

「お加減、だいぶ悪いんでしょうか?」

怖じけていても仕方ないので、私は質問する。

「ここ二、三日は多少いいようだ。暖かい日が続いたからな」

「病気のこと、伺ってもいいですか?」

「若年性アルツハイマー」

部長は仕事の内容を言うみたいに、あっさりと言った。

想像と違う病に、私は驚く。

「隠していたつもりはないんだが。すまん」

「なんで謝るんですか。謝る理由ないです」

「正直、おまえに重いと思われそうで言いづらかった」

彼は無表情に言葉を続ける。

まだ戸惑いが感じられた。私は打ち消すように答える。

「重いなんて言いません。私のお義母さんの話なんですから」

「少し、俺の親の話を聞いてくれるか?」

部長が前を見たまま言い、私は「はい」と力強く返事をした。

「俺は親父が五十五歳、お袋が二十五歳のときの子だ。三十も年が離れているのに、親父は初婚で、ふたりは恋愛結婚だった。坊さんだった親父は俺が十歳の年にガンで死んだ。寺は新しい住職に任せ、お袋と俺は叔父の家に身を寄せた」

ハンドルを握る部長の手を見つめる。白く筋が浮いている。

「お袋は叔父の農家を手伝い、夜は近所の居酒屋の店員をして俺を育ててくれた。親父はそこそこ金を遺してくれたようなんだが、お袋はそれを手つかずで俺に渡したかったみたいだな」

部長の語り口はあくまで冷静で、ただの説明のようだ。

感情を挟めるほど整理できていないのかもしれない。

「俺が大学に入って上京すると、お袋の体調がおかしくなっていった。最初は物忘れ。居酒屋の注文が覚えられなくなって、野菜の数を間違えて書くようになった。ある日、野菜を農協に卸しに行って帰り道がわからなくなった。それで、病気がわかったんだ」

聞いたことがある。新しいことを覚えられなくなったり、普段使っていた道がわからなくなったり、そんな症状が出るって。

「大学を出たら、俺は地元に戻ろうと思った。お袋の面倒を見ながら、市役所みたいな安定した職に就こうと。でも、社長と会って、やりたいことができてしまった。お袋には俺の気持ちがわかったんだろうな。自分の病気を理由に息子を束縛したくなかったんだ。頑張ってこいと言われ、俺はお袋の気持ちに甘えて仕事を取った」

社長の言葉が脳裏をよぎる。

罪悪感。病気のお母さんを置いて仕事を取ったこと。それがずっと彼を縛っている。

「ゆっくりさよならするようなもの。アルツハイマーを指して、そう言うことがある。俺はそれを知りながら、お袋と離れた。自分からはあまり連絡もせず、忙しさを理由に帰省もほとんどしなかった。怖かったのが一番の理由だ。俺が置き去りにした母が、どんどんものがわからなくなり、しまいには俺のこともわからなくなることが。だから全力で逃げた」

言葉にようやく感情がちらついた。それは圧倒的な後悔と、懺(ざん)悔(げ)に満ちていた。

「恐れていた日は、五年ほど前にやってきた。お袋が暴れてデイサービス施設を飛び出したという連絡が来たんだ。俺は実家に飛んで帰った。お袋は昔暮らした寺の裏山で、雨に濡れて震えてたよ。俺のことも、自分のことも、わからなくなってた」

「部長……」

「その事件をきっかけに、俺はお袋を完全預かりの施設に入れた。高齢の叔父夫婦に、それ以上迷惑もかけられなかったしな。お袋は調子がいいときはニコニコ笑ってるんだが、妄想が暴れだすと、徘徊したり奇声を上げたりする。そんな姿を見るのは忍びなかった。俺は余計、故郷に近づかなくなった。……どうだ?呆れただろう?」

部長は自嘲の笑みを浮かべた。

「母親を捨てた男が、父親になろうとしてる。だが、お袋も自分の中の息子を消去して子どもに還ってしまったわけだから、これは〝あいこ〟というやつかな」

「私は、部長がお母さんを捨てたとは思ってませんよ」

きっぱりと言いきった。

「遅くなりましたけど、これから結婚の挨拶に行くんですから」

部長は横目で一瞬、私を見た。暫時、沈黙が流れ、彼が答えた。

「ありがとう、佐波」

 

 

豊(とよ)田(た)で高速を降り、部長の運転する車は西へ向かってさらに走る。

一時間ほどで、部長の実家である叔父さん夫妻の家に到着した。

そのお宅は聞いていた通り、大規模に農業を営んでいて、大きな日本家屋の裏は山裾までの広い土地が畑だった。

お母さんに会いに行くことは伝えてある。

簡単に挨拶を済ませ、お茶をごちそうになると私たちは出発した。

叔母さんからは、夏物のパジャマを届けてくれるようにことづかった。

お母さんが入所する施設まで二十分。

再びハンドルを握った部長の表情は硬く、私はまだかける言葉が決まらなかった。

お母さんは隣町の特別養護老人ホームに入所しているそうだ。

部長の年を考えれば、お母さんはまだ五十八歳。老人と呼ぶには早すぎる年齢だ。

行きがけに、部長が昔住んでいたお寺の近くを通った。

小高い丘に立地したその寺院。

緑の中に垣間見える建物は真新しく、白い壁に日光を反射させている。

「建て替えたんだな。もう、俺が住んでた頃の面影はない」

部長がわずかに感傷を差し挟んだ声音で呟いた。

お母さんと、亡きお父さんと部長が暮らした場所。

十年間の幸福な日々の住(すみ)処(か)は、もう彼の心の中にしかない。

 

 

施設の駐車場に車を停め、面会の旨を受付に伝える。

てっきり居室に案内されるのかと思ったら、お母さんは今、中庭にいるらしい。

途中で案内を断ると、職員の女性が言った。

「一色さん、今日は大変落ち着かれていますので、もしかするとお話ができるかもしれませんよ」

中庭は建物に四方を囲まれた場所にあった。文字通りの中庭だ。

入所者の脱走を防ぐ構造のようで、他にも高い塀やフェンスがある。

屋外に出ると、草木の間に何人かの年配の入所者が見えた。

それと近い数の職員もいる。みんな、花を眺めている。咲き始めたばかりの薔薇(ばら)だ。

「いた。お袋だ」

部長が呟いた。指差す先に、長い黒髪の女性が車椅子に乗っている。

年は本当に若く見え、まだ四十代といっても違和感はないほど美しい人だ。

部長の面立ちはお母さん似なのだとわかる。

彼女はカーディガンを羽織った背を丸め、薔薇を熱心に見つめている。

「佐波、行ってきてくれないか」

部長がかすれた声で言った。

私は部長の顔を見やる。彼は目を見開き、凍りついたかのように動かない。

きっと、彼の心に残る母親の面影と、今目の前にいる母親の姿が重ならないのだろう。

心の受け入れ準備がまだできていない。

私は一度、部長の手をぎゅっと握った。それから、笑ってみせる。

「私とポンちゃんで行ってきますね」

砂利を踏み、一歩一歩、近づく。緊張で心臓が早鐘を打っている。

部長のお母さんにようやく会えるのだ。

車椅子の横に立つと、彼女が薔薇を見ていたのではなく、周りを飛ぶミツバチを目で追っていたことがわかった。

視線の熱心さゆえに伝わるのは、彼女の心が現実から遠く離れていること。

「一色さん、お客さんですよー」

私たちが来ることは事前に連絡がいっていたのだろう。職員の若い女性が、お母さんに声をかける。

お母さんがのろのろと顔を上げ、私の姿を見た。

「こんにちは」

私は微笑み、なるべく穏やかに挨拶した。

するとお母さんが急に立ち上がった。

目に精気が宿り、一瞬、彼女の顔は精神を取り戻したかに見えた。

しかし、違った。お母さんはあくまで遠い世界にいながら、私に反応したのだ。

正確には、私のお腹のポンちゃんに。

「あらぁ、あなた、赤ちゃんがいるの?」

お母さんは大きな声で言い、私に歩み寄る。そして、私の膨らんだお腹を撫で始めた。

私は一瞬面食らったけれど、すぐに「はい」と頷く。

「今、八ヵ月なんです」

「あらあらあら、大きいお腹」

お母さんは、話を聞いているのかいないのかわからないタイミングで話す。手は無心に私のお腹を撫でている。

おそらく、この会話は部長にも聞こえている。

あなたの孫です。そう言ったほうがいいだろうか。

『息子の褝さんと結婚させていただきました、佐波と申します』

言葉の準備はできていた。しかし、それを言って意味があるのかわからなかった。

「ねえ!あなた!今、蹴ったわよ、この子!元気ねぇ!」

ポンちゃんが大きく動き、お母さんは、はしゃいだ叫び声を上げる。

横へサポートに来た若い職員さんが「そうですねぇ」と相槌を打つ。

「男の子?女の子?もう、わかるの?」

「女の子だそうです」

お母さんがまた嬉しそうな歓声を上げた。

それから彼女は、ぺたりと地面にひざまずいた。

何事かと焦った私をよそに、お母さんは私のお腹に耳をつける。

中の音を聞きたいようだった。

「私もね、男の子を産んだの」

彼女が一転、静かな声音で言った。

私は様子を窺い知ろうと顔を覗くけれど、よく見えない。

「褝っていうの。今、一歳なのよ。すごく可愛いの。あの子、将来はハンサムになるわよ」

お母さんは満足したように顔を離し、職員さんに支えられながら車椅子に戻った。

「早く、早く、褝に会いたいわ」

待ちきれないと言わんばかりに足をバタバタと動かす。

涙が出そうになった。

ああ、ゼンさん。聞こえていましたか?お母さんはあなたのことを、忘れてなんかいない。

小さな赤ちゃんのままだけど、ちゃんとお母さんの心に、あなたの居場所はあります。

私は涙をこらえ、彼女の前にかがみ込んだ。

「赤ちゃんが産まれたら、また来てもいいですか?」

お母さんはもうなにも言わなかった。

瞳はすでに虚ろな色味に戻り、心は遠く旅に出ているようだった。

それでも、ニコニコと頷いていた。何度も何度も。

私は職員の女性にスカーフとパジャマを渡し、部長の元に戻った。

部長は中庭の入口に移動して待っていた。

理由はすぐにわかった。彼の目が、涙で真っ赤になっていたからだ。

「ゼンさん。お母さん、覚えてますよ」

私は言った。それから、高い位置にある部長の頭を抱き寄せる。

彼は私の身体に腕を回し、顔を首筋にうずめ、声を殺して泣き始めた。

親子の邂逅(かいこう)。奇跡のような一瞬。

まるでポンちゃんが出会わせてくれたみたいだ。

来てよかった。本当によかった。

私たちは互いの身体を支え合うように寄り添い、施設をあとにした。

 

 

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この記事のキュレーター

砂川雨路
新潟県出身、東京都在住。著書に、『クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした』(ベリーズ文庫)『僕らの空は群青色』『ご懐妊‼』(スターツ出版文庫)などがある。現在、小説サイト『Berry’s Cafe』『ノベマ!』にて執筆活動中。

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