もっともっと痩せなくちゃ…本当に怖い拒食症

周りから「痩せ過ぎじゃない?」と心配されても、自分は太っているからまだまだ痩せなきゃと思ってしまう拒食症。自分の体形に対する認識が大きく歪んでしまうことがその理由です。

拒食症は単なるダイエットのし過ぎではなく、一度なってしまうとなかなか治らない怖い病気。その症状を知り、拒食症への理解を深めましょう。

 “終わりのない痩せ願望”を招く拒食症

傍から見れば病的に痩せている体型でも、拒食症の人は「私は太っている。まだまだ痩せる必要がある」と強く感じています。

生活の中心は体重のことになり、食事は常にカロリー計算しながら、食事が終われば毎回体重計に乗ってしまい、少しでも許容量を超えていればショックを受ける。

「まだお腹の肉が気になる」「体重40kg以下じゃないと」と、どれだけ痩せても本人は決して満足できません。

なかには、口では「本当はもっと太りたいと思っている」と言う人もいます。でも、太るような行動は絶対にとれないことから、拒食症の診断は可能です。

 

拒食症は命に関わる怖い病気

拒食症は「摂食障害」の一種です。別名、神経性食欲不振症とも言います。

摂食障害には大きく分けて拒食症と過食症とがあり、下記項目に該当する場合が拒食症とされています。

① 体重が標準体重の80%以下の状態が何ヶ月も続く

② ほとんど食事をとらないなど食行動の異常がみられる

③ 体重や体形にゆがんだ認識を持っている

④ 生理がない

⑤ 発症年齢が30歳以下

⑥ やせた原因になる病気が他にない

 

拒食症には、ひたすら食事を制限することで痩せるタイプと、やけ食いをしては嘔吐や下剤の乱用を繰り返すことで体重を減らし続けるタイプがあります。

少しでも体重が増えればひどい自己嫌悪に襲われ、抑うつ状態になり、死にたいと思うことすらあります。

 

拒食症の原因は複雑

現代社会には、「痩せている女性が美しい」というメッセージがあふれています。

痩せた人に「キレイになったね」と言うのは、誰でも行うコミュニケーションの一環ですが、そうやって周りから褒められることが、拒食症になるまでその人を追い込むきっかけになることも。

時には家族など親しい人によって体重が多い人への批判的な発言が繰り返されることで、歪んだ価値観が刷り込まれる場合もあります。

 

このような社会的背景が、拒食症を引き起こす原因の1つである可能性が指摘されています。

拒食症は、カラダの病気ではなく、ココロの病気です。単に食事を改善すれば体重が増えるというものではなく、拒食症を引き起こした背景にも配慮しなければ改善しにくいものなのです。

 

こんなに怖い拒食症の症状

極端な体重の減少は、カラダが飢餓状態に陥っているということ。

女性の場合、生理が止まります。筋力が低下し、骨粗しょう症にもなりやすくなります。その他、脱水を起こしたり、内臓に色々な問題を抱えてしまったりすることも。

食事制限で体重を減らすだけでなく、そこに嘔吐や下剤の乱用などが加わると、さらに症状は深刻になり、慢性化の原因となります。最悪の場合、死に至ってしまう人もいるのです。

 

拒食症は治る病気!その治療法とは

極端な痩せ指向を改善するための心理療法が中心です。拒食症に対する特効薬はありません。以下のような目標を持ち、治療を続けていきます。

・ 規則的に食事をとる

・ 空腹感、満腹感に罪悪感を持たない

・ 完ぺき主義的思考をやめる

・ 対人関係で感情をコントロールできるようにする

 

著しい低栄養や合併症などで緊急入院する場合を除き、外来での治療が原則となります。

拒食症の治療には身近な人間の協力が必要不可欠です。家庭環境が治療にふさわしくないと判断された場合は、入院治療もありえます。

特効薬はありませんが、きちんと治療に取り組めば、必ず回復しうるものなので、根気よく取り組んでいく必要があります。

 

★今回のポイント★

・太ることへの強い恐怖感から、拒食症になる

・最悪の場合、拒食症が原因で死に至ることも

・拒食症を根本的に治すにはココロの治療が必要不可欠

 

 

この記事の監修
婦人科専門医  松村 圭子先生

この記事のキュレーター

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