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不妊治療の始めどきは「何人子どもが欲しい?」希望次第!人工授精・体外受精・顕微授精も 不妊治療クリニック受診ガイドSTEP4&5[男女共通]【マンガで解説】
■マンガ・イラスト/小森うに
妊活を始めたけれど…なかなか妊娠しない。そろそろクリニックに行ったほうがいい?
クリニックでの不妊治療の最初のステップは「検査」です。どんな検査をするのか、また必要な準備についてマンガでお伝えします! その先にある治療の内容についても知っておきましょう。
今回は、【ステップ4&5】 人工授精・体外受精・顕微授精と不妊治療の始めどきについて、齊藤英和先生に詳しく解説していただきました。
不妊検査を始めたばかりの人にとっては、人工授精や体外受精は遠い先のことのように感じるかもしれませんが、どんな治療が行われるのかだけでも知っておきましょう。
監修
齊藤英和 先生
PROFILE:産婦人科医師。栄賢会梅ヶ丘産婦人科ARTセンター長。国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター副センター長を経て現職。長年、不妊治療の現場に携わる中で感じてきたことから、加齢による妊娠力の低下や、高齢出産のリスクについての啓発活動も行う。著書に「妊活バイブル」(共著・講談社)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著・講談社)など。
マンガでわかる!いつかのための不妊治療クリニック受診ガイド #6
※参考:「妊活たまごクラブ 2024-2025年版」
マンガに登場するのは…
もうじき結婚して2年になる玉田陽太とひな夫妻。同じ会社の同期で32歳。
サッカー観戦が共通の趣味で、毎日楽しく過ごしているけれど、友人たちからの妊娠報告にちょっとあせり始めたところ。
【人工授精】精子を子宮に注入して受精の確率を高める方法
人工授精は、採取した精子を専用の注射器を使って子宮の奥へ注入し、受精の確率を高める方法。この方法を行うのは、男性側に乏精子症や精子の運動性が低い精子無力症、女性側に精子の進入を妨げる頸管粘液不全などのトラブルがあり、精子が子宮内をスムーズに進むことができない場合です。平均治療期間は3~6ヶ月です。
【Q】将来の不妊に備えて「卵子の凍結」はできますか?
技術的には可能ですが、卵子は凍結した年齢時点のものです。母体は年齢が上がれば、妊娠成立後の妊娠経過・出産・産後のリスクは格段に上がり、がんなど健康を害するリスも高くなります。また、凍結した卵子は保管にも解凍にも費用がかかります。凍結した卵子を使って、必ずしも妊娠が成立するとは限りません。それよりも自然妊娠できる環境を早く整える方がいいでしょう。
人工授精のプロセス
(1)排卵日に、採取した精子を子宮に注入する
検査を行って排卵日を予測したら、その日にカップルで受診します。病院で精液を採取して洗浄などの処置をしたあとに、精子を専用の注射器で子宮に注入します。自宅で採精し、女性が持参する場合もあります。
(2)排卵の有無と黄体ホルモンの分泌状態を確認する
予測した排卵日のあとに超音波検査を行います。排卵が正常に起こったか、子宮内を着床しやすい状態に整える黄体ホルモンが正常に分泌されているかをチェックします。
(3)妊娠判定検査を行う
月経予定日を過ぎたら、妊娠が成立したかどうか、超音波検査や尿検査、内診などで判定をします。
【体外受精/顕微授精】精子と卵子を体外で受精させ、子宮に移植する方法
体外受精や顕微授精は、精子と卵子を採取して、胚を取り扱える技術者(医師あるいは胚培養士)により受精し培養したあと、細胞分裂した胚を子宮に移植する方法です。男性の精子無力症や女性の卵管障害がある場合に、とくに有効な治療法といわれています。体外受精と顕微授精の違いは受精の方法のみ。そのほかの過程はどちらも同じです。
体外受精/顕微授精のプロセス
(1)排卵誘発を行う
質の良い卵子を育てるために、排卵誘発剤を用いるのが一般的。状況に応じて、体への負担が軽い、低刺激のタイプを用いる場合も。
(2)採卵・採精を行う
卵子が育ったら、卵巣から卵子を採取します(採卵)。採卵後、精液を採取する採精を行い、そのなかから運動性の高い精子を選択。
(3)受精(媒精)を行う
体外受精の場合は卵子に精子を振りかける媒精を行い、顕微授精の場合は精子を卵子の細胞質の中に注入して、それぞれ受精させます。
(4)胚を培養する
受精が起こると細胞分裂が始まります。2~6日かけて、4~8分割胚、または胚盤胞と呼ばれる状態になるまで、培養器の中で培養します。
(5)胚を子宮に移植する
4~8分割胚になったら、良質の胚を選び子宮内に移植します。状況に応じて、約5日で胚盤胞と呼ばれる状態になってから移植する場合も。
【受診前に2人で話しておこう】何人子どもが欲しい?から考える不妊治療の始めどき
★若いほど、妊娠する確率は高い。32歳から急激に下がり始めます
上記のグラフを見ると、データから、若いほど妊娠しやすいことは明らかです。そして妊娠率は年齢を追うごとに均等に下がるのではなく、32歳を過ぎたあたりから急に落ちるのがわかります。体外受精をすれば年齢が多少高くても妊娠できますが、限界があります。
また、人工授精も一定の回数を超えると妊娠率が上がらないというデータもあります。人工授精による累積の妊娠率は、はじめは回数を重ねただけ上がりますが、一定の回数から変化がなくなります。40歳未満の場合、7回目で累積妊娠率は約27%まで上がりますが、それ以降はほぼ横ばいとなります。40歳以上の場合、累積妊娠率は20%にとどまります。
年齢が上がると高度な医療が必要でお金も時間もかかり、しかも健康リスクも高まります。子どもを複数欲しいと思えばなおさらです。授かった子どもが20歳になるとき、自分は何歳になるのか、そのときの生活イメージをもってライフプランを立てましょう。
不妊治療は早くスタートするのがいちばん!
妊娠する確率は、医療の助けを得たとしても年齢が若いほうが高い、これは不変です。早く検査や不妊治療をすることは、結果的に時間も費用も節約できることになります。また、不妊治療のゴールは妊娠ではありません。妊娠が継続して、無事に出産して、子育てしていくことまでイメージしましょう。
保険適用で治療費が下がったことによって、悩む時間も短くて済むようになったと考えて、「自分たちにとっての早い段階」を見極めて、不妊治療を早くスタートするのが正解です。
■監修
■マンガ・イラスト/小森うに
5年半の妊活・不妊治療を経験。自身の不妊治療体験の漫画をSNSやブログで発信中。また、不妊症・不育症ピアサポーターとして不妊治療中のかたの相談を受けるなどの活動をしている。
■構成・文/関川香織
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