関連記事
初めての体外受精・顕微授精をもっと知るために Q&A
イラスト/コナガイ香
自分たちなりに妊活をしてみたけれど、なかなか赤ちゃんを授からない。
もしかして不妊? まずは不妊治療の基本的な流れを知ることから始めましょう。
2022年4月に不妊治療の保険適用がスタートし、最初に2人での受診が必要になりました。
今回は「体外受精による受精卵の成長」と「体外受精後のリスク&Topics」について、田口早桐先生にお聞きしました。
監修の先生
PROFILE: 産婦人科医、生殖医療専門医。兵庫医科大学大学院で不妊症を研究。兵庫医科大学病院、府中病院を経て、医療法人オーク会にて不妊治療を専門に診療にあたる。著書に『やっぱり子どもがほしい! 産婦人科医の不妊治療体験記』(集英社インターナショナル)など。 https://www.oakclinic-group.com/
不妊治療 2人のスタートガイド #6
※参考:「妊活たまごクラブ 初めての不妊治療クリニックガイド 2023-2024」
体外受精による受精卵の成長
体外受精を経て受精確認。そのあとの受精卵が胚として成長していく様子を紹介します。
体外受精や顕微授精を行い、受精が成功すると受精卵(胚)となり、その後も細胞分裂を繰り返して成長していきます。1週間程度倍養したものを、子宮内に戻します。
写真のように、順調に育つのは、約40~50%で、胚を凍結する際には、3~5日目の間に行います。
受精卵(胚)の成長
受精後、4日ほどをかけて、受精卵(胚)は細胞分裂をしていきます。4日目には、分裂した細胞同士がくっついて桑の実のような桑実胚になります。5日目には胚盤胞と呼ばれる胚になり、赤ちゃんと胎盤の部分が形成されていきます。さらに胚盤胞は分裂を繰り返し(拡張胚盤胞)、最終的には内部の胚が出てきます。これを孵化といい、その後、着床します。移植のタイミングは、胚の状態や患者さんの状態によって決定します。
体外受精後のリスク&Topics
どんな医療行為もそうですが、そこにはリスクが伴います。
不妊治療でのリスクと、治療に関する最新情報をお届けします。
【事前に知っておくべき】不妊治療のリスク
●OHSS
卵巣過剰刺激症候群。排卵誘発剤が原因で発症するもので、排卵誘発剤の刺激が強すぎると、卵巣が大きくなり全身の脱水や腹水がたまったり、吐き気や下痢などの症状が出ます。リスクのある人には、低刺激法などを行います。
●異所性(子宮外)妊娠
もともと全妊娠の0.5~1.5%に発生し、誰にでも起こる可能性があります。最も頻度が高いのは卵管部での妊娠。ただし、胚盤胞まで育ててから移植する胚盤胞移植は、初期胚移植よりも異所性妊娠の確率が低くなっています。
●多胎妊娠
現在は、子宮に戻す受精卵(胚)の数は、上限2個までに制限されているので三つ子以上の妊娠は少なくなりました。多胎妊娠は流産、死産、低体重児のリスクが高くなります。
●自然妊娠でも同様に起こるリスク
そもそも流産・死産のリスクは、体外受精でも自然妊娠でも15%前後あります。妊娠22週未満であれば流産、22週以降に子宮内で胎児が死亡すると死産となります。また、絨毛という受精卵の胎盤の一部だけがぶどうのような形で異常に増える胞状奇胎は、発生率が0.2%前後です。
●それ以外のリスク
卵巣刺激、子宮内膜症や高プロラクチン血症の治療など、不妊治療にはさまざまな薬が使われる場合もあります。副作用によるめまい、のぼせ、人によっては呼吸困難も。薬以外では採卵時の出血や感染などの可能性もあります。
Topics
●受精卵の凍結
現在の医療では、卵子から胚盤胞まで凍結が可能。理論上は半永久的に保存できます。融解後の胚の生存率は約95%以上。胚移植に用いなかった良好の受精卵(胚)も、原則凍結保存します。凍結胚での妊娠でも、赤ちゃんの先天異常のリスクが高まることはありません。
●保険適用で変わったこと
保険適用で原則3割負担となったので、若い人も受診しやすくなりました。不妊治療にかかる費用は、初診料、超音波検査、精液検査など基本の検査費用に加えて、人工授精、体外受精のための費用、さらに必要であれば排卵誘発剤の費用などもかかってきます。
●治療をやめる目安は?
40歳以上で、体外受精を3~4回行っても、いい胚盤胞ができない場合、不妊治療は体力面・経済面だけでなく、精神面でも負担がかかります。「やめる」のではなく、「休む」という選択肢も含め、パートナーと話し合うことが必要です。
●SEET法
妊娠において、受精卵(胚)が胚盤胞に成長するときに分泌される伝達物質が、子宮の着床準備に関わっています。そこで胚培養をして胚盤胞を凍結するときに、受精卵(胚)を培養した培養液も同時に凍結します。胚移植をするときは、先に培養液を子宮内に注入し、その数日後に胚盤胞を子宮に移植することで着床しやすい状態になると言われています。
●アシステッドハッチング法
ハッチングとは孵化という意味で、孵化を補助する治療法です。受精卵のまわりには透明帯という殻があります。凍結胚の場合や年齢が高くなると、透明帯が硬くなるともいわれています。殻が硬いと、なかなか透明帯から出ることができず、着床が難しくなります。そこで、透明帯の一部を薄くしたり切れ目をつけるなど、孵化しやすくする処理を行います。
●着床前スクリーニング
これには、着床前胚染色体異数性検査の「PGT-A」があります。PGT-Aは体外受精前に胚の染色体数を調べ、正常な胚盤胞のみ移植することで妊娠率の向上や流産率の低下が期待できます。PGT-A検査は自費診療となります。
■監修
●イラスト/コナガイ香
●撮影/鈴木江実子
●構成・文/長谷川華(はなぱんち)
●撮影・写真協力/オーク銀座レディースクリニック
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
ルナルナの最新情報をお届けします