なぜ妊娠しない?その原因を探る不妊治療の基本ステップを解説

イラスト/コナガイ香

自分たちなりに妊活をしてみたけれど、なかなか赤ちゃんを授からない。
もしかして不妊? まずは不妊治療の基本的な流れを知ることから始めましょう。
2022年4月に不妊治療の保険適用がスタートし、最初に2人での受診が必要になりました。

今回は「不妊治療の3STEP」「不妊の原因」について、田口早桐先生にお聞きしました。

監修の先生

田口早桐 先生(オーク銀座レディースクリニック医師)

PROFILE: 産婦人科医、生殖医療専門医。兵庫医科大学大学院で不妊症を研究。兵庫医科大学病院、府中病院を経て、医療法人オーク会にて不妊治療を専門に診療にあたる。著書に『やっぱり子どもがほしい! 産婦人科医の不妊治療体験記』(集英社インターナショナル)など。 https://www.oakclinic-group.com/

不妊治療 2人のスタートガイド #2
※参考:「妊活たまごクラブ 初めての不妊治療クリニックガイド 2023-2024」

不妊治療の3STEP

不妊治療を開始した場合、妊娠を目指す方法は主に3つあります。
「タイミング法」「人工授精」「体外受精(または顕微授精)」です。
それぞれどんなことを行うのか、ステップごとに説明します。

不妊治療の妊娠率は、年齢などによっても違いますが、一般的にタイミング法で約5%、人工授精で約8%、体外受精で約30%といわれています。

最近は妊活アプリなどの普及で、タイミング法はすでに試しているカップルも多く、年齢や不妊の原因によっては人工授精や体外受精から開始するケースも増えています。

問診・検査

女性が受けるのは、血液・ホルモン検査、超音波検査、AMH検査、クラミジア検査、子宮卵管造影検査(または通水検査)など。生理周期に合わせるため複数回通院しますが、だいたい1周期(1カ月)でデータが出揃います。検査結果に応じて腹腔鏡検査、子宮鏡検査、染色体検査、MRI検査を行います。

【Step1】タイミング法

超音波検査で卵胞の大きさを見て排卵日を予測。医師が指定したタイミングでセックスをします。その後排卵の有無をチェック。排卵誘発剤を使用する場合も。自分たちでタイミング法を試してから受診する人も多く、検査の結果次第によっては早めにステップ2に進みます。

【Step2】人工授精(AIH/IUI)

医師の指定した日に採取した精液を、洗浄・濃縮して子宮腔内に注入します。自然妊娠に近い形なので、体への負担も比較的軽め。2022年4月から保険適用に。6回で妊娠率が頭打ちになるため、年齢により2~3回、最大6回で次に進みます。

【Step3】体外受精(IVF)または顕微授精(ICSI)

体外受精は、精子と卵子を採取して、培養液の中で受精させて培養し、子宮内に戻します。顕微授精は、体外受精の方法の1つで、卵子に直接精子を注入する方法です。現時点では、不妊治療の最後の砦です。女性の年齢が高い場合は、早めに体外受精を行います。

不妊の原因

日本産科婦人科学会では、妊娠を望んで性交をしていても1年以上妊娠しない場合を「不妊」の目安にしています。
不妊の原因は、女性側と男性側、どちらも考えられます。また、検査をしても原因が特定できない場合もあります。

不妊治療のクリニックでは、最初に問診をして、男性も女性も基本的な検査を受けます。検査をしながら同時進行でタイミング法も行い、自然妊娠を試すこともあります。
不妊の原因は1つとは限らず、また身体的には問題がなくても精神的なストレスによる月経不順など、さまざまな原因が考えられます。

◆女性側の因子

●子宮因子
・子宮奇形
・子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ
・子宮内腔癒着症(アッシャーマン症候群)
・子宮内膜増殖不全

●免疫因子
・抗精子抗体

●内分泌因子
・無排卵
・卵胞発育不全、黄体機能不全
・甲状腺疾患、副腎皮質疾患

●卵管因子
・卵管通過障害(クラミジア、淋菌等)
・卵管周囲癒着(虫垂炎、子宮内膜症、クラミジア等)
・卵管留水症・留膿症

●頸管因子
・頸管粘液分泌不全
・頸管狭窄、頸管炎

◆男性側の因子

精液検査で必要な精液を採取するための「採精室」
精液検査で必要な精液を採取するための「採精室」

●精子因子
・無精子症、乏精子症、精子無力症、精子奇形症
・精子の運動障害、受精障害
・その他(精液量が少ない、白血球が基準値以上)

●性機能因子
・性交障害、射精障害、逆行性射精

◆その他の原因

・子宮内膜症
・腟閉鎖、腟欠損症、高度腟炎
・原因不明不妊

【女性の年齢別】不妊治療法の目安

不妊治療は、まず一般的な検査(ホルモン検査、子宮卵管造影検査、精液検査、フーナーテスト、超音波検査等)を一通り行った上で、特別に問題がない場合は、女性の年齢と不妊期間に合わせておおよそ表のように進めていきます。

【原因に合わせて治療法も変わってくる】男性不妊の場合

男性は、まず精液検査を行い、原因があればそれに合わせて治療プランを立てていきます。男性不妊の原因の中で圧倒的に多いのが、精子の少ない「乏精子症」や精液中に精子が存在しない「無精子症」、精子の運動率が低下する「精子無力症」です。

■監修

田口早桐 先生

●イラスト/コナガイ香
●撮影/鈴木江実子
●構成・文/長谷川華(はなぱんち)
●撮影・写真協力/オーク銀座レディースクリニック

※記事掲載の内容は2023年8月25日現在のものです。以降変更されることもありますので、ご了承ください。

▼『妊活たまごクラブ 初めての不妊治療クリニックガイド 2023-2024』は、妊活から一歩踏み出して、不妊治療を考え始めたら手に取ってほしい1冊。

この記事のキュレーター

妊娠・出産・育児の総合ブランド「たまひよ」。雑誌『妊活たまごクラブ』『たまごクラブ』『ひよこクラブ』を中心に、妊活・妊娠・出産・育児における情報・サービスを幅広く提供しています。


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