不安に押しつぶされそう。公認心理師が教える不安との付き合い方

毎日飛び込んでくる新型コロナウイルスのニュース。感染リスクを考えながらの生活に不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
今回、国立成育医療研究センターとルナルナが共同で、実際に不安を感じられている方がどれくらいいらっしゃるのかを調査しました。その結果を受けて、不安な気持ちと上手につきあう方法について公認心理師の方のアドバイスをご紹介します。

8割が不安を感じていた。新型コロナウイルス感染症による生活での変化

新型コロナウイルス感染症の影響が濃くなる中、ルナルナアプリを用いたユーザー参加型研究に参加くださっている女性の方に対して、新型コロナウイルス感染症について不安に感じていること/感じたことをお聞きし、7585人の方から回答をいただきました。

8割の方がご自身からご家族への感染を、約7割の方がご自身に感染することや、いつこの状況が収束するのかについて、不安に感じていることがわかりました。
また、4割の方が収入に関する不安をお持ちでした。

緊急事態宣言解除後もさまざまに不安を抱えながら生活しているようです。 

実施期間:2020514日〜614日/7585人回答

 

「不安」は適切な行動をとるための大事なバロメーター

今回の調査結果より、私たちはさまざまな不安を感じていることがわかりました。

「知らない間に家族に感染させてしまったら」という感染の不安、「この先、生活レベルを維持していけるのだろうか」という経済的不安、「将来の見通しを立てられない」という不確実性への不安などを、多くの方が感じているようです。
また、不安な状態が続くと気分が落ち込んで集中しづらく、やる気がでにくくなることもあるかもしれません。

一方で、あなたのその不安は、なくしたほうがいい感情かというとそうではありません。

不安によって危険を回避しようとしたり、不安があるときにあなたの活動を制限したりするのは、日常とは異なる状況の中で、人間のこころに備わった、自分自身を防御するための反応ともいえます。

皆さんの「不安」は、みなさんの生命や生活の維持のために必要な行動をとらせてくれる大切な感情なのです。

 

「不安」が適切な行動の妨げになるとき

皆さんが感じる不安に呼応して感染防止や生活維持の可能性を高める行動、今あなたができる最善の行動をとることができているのであれば、皆さんの「不安」は適切に働いているといえます。

しかしながら、「不安」があなたの考える最善の行動を妨げてしまうことがあります。

例えば、「仕事を失ったらどうしよう」と強く不安に思うあまり、かえって仕事に集中できずにミスを繰り返してしまうとしたら、どうでしょうか。

例えば、「不安」を感じることが不快だからと、不安を感じるような情報を徹底的に避け、適切な情報が得られていないために感染防止対策をとれず感染してしまったとしたらどうでしょうか。

いずれも本末転倒ですね。

前者は、「すぐにでも自分は解雇されてそのあと仕事が見つからずに家賃も払えなくなって住むところも失い、食べるにもことかくようになったら」など極端に悲観的な推測をしており、後者は「世間が騒ぎすぎているだけで簡単に感染しないし感染しても自分は大丈夫」など極端に楽観的な推測をしている、と考えられます。

自分は望ましい行動がとれなくなっているなと感じている時、たいていは上記のように一つの考え方にとらわれていることが多いのです。

 

「不安」が弱すぎたり強すぎたりするときは、考え方を変えてみる

こういう時は、「最高」、「最悪」、「もっともありそう」の未来を想像して、それらを書き出すことによって、一つの考えにとらわれないようにしてみましょう。

例えば、契約更新を前にしたある派遣社員の方が「2か月後の更新ができなかったらどうしよう」という不安を感じたとします。

「最悪どうなりそう?」「最高でどうなりそう?」「もっともありそうな状況は?」と3つの問いの答えを考えてみます。


最高
何ごともなく契約更新。そのあとも安泰でいられる。

もっともありそう
契約を打ち切られる可能性は50%。もし打ち切られても、やや条件の悪いところであれば契約はでき、当面の生活費はなんとか稼ぐことができる。

最悪
契約打ち切られる。その後も仕事が見つからず、貯金もなくなり、家賃が払えずに住む場所も失い、食べるものにも困るようになる。

 

考え方を変えると気持ちが変わる

「最高」の考え方にとらわれてしまうと契約更新のための努力ができなくなってしまうかもしれません。

「最悪」の考え方にとらわれてしまうと強い不安で仕事に集中できなくなり、かえって契約更新のチャンスを逃してしまうかもしれません。

「もっともありそう」の考え方なら、契約更新のための努力をしたり、もし契約打ち切りになった場合に備えた情報収集や資格取得の勉強をしようと思えたりするかもしれません。

強い感情があなたの適切な行動の妨げになっている時は、考え方を変えると強すぎる感情が和らぎ、そうすることでより適切な行動をとりやすくなります。

不安が強すぎたり、現実から目をそらしてしまっていると感じた時には、ぜひ試してみてください。

 

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この記事の監修
国立成育医療研究センター 社会学研究部
公認心理師 REBT (Rational Emotive Behavior Therapy) 心理士 三瓶舞紀子 先生

この記事のキュレーター

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