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震災で見えた、日本の性教育レベル。~非常時こそ、「正しい知識」を味方につけよう~
近年、自然災害により避難所生活を強いられた女性の多くが、女性特有の生理現象や健康に関わる課題に直面しています。
生理のある女性にとって必需品である生理用品が、 【贅沢品】として配布されない場所があったそうです。
なぜ、このようなことが起きてしまったのでしょうか?
避難所で直面する、女性特有の死活問題とは?
2016年4月に発生した熊本地震。その後も激しい揺れの余震が収まらず、自宅が倒壊したり、避難を余儀なくされている方たちが多くいます。2011年には記憶に新しい東日本大震災、1995年には阪神淡路大震災もありました。こうした大災害に見舞われ、避難所生活を強いられた女性たちの多くが、実は毎回「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(※1)」(以下「リプロ」)に関わる課題に直面していたことを知っていますか?主要ニュースで語られる「水や食料」などとは違い、あまり表立って報道されない内容ですが、女性たちにとっては死活問題である「被災地/避難所におけるリプロケア・ニーズ(※2)」、そしてそこから見えてくる日本のリプロに関わる課題について考えたいと思います。
(※1)
リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは:女性が身体的・精神的・社会的健康を維持し、子どもを産むか産まないか、いつ産むか、どれくらいの間隔で産むかなどについて選択し、自ら決定する権利のこと。
(※2)
被災地/避難所におけるリプロケア・ニーズとは:女性特有の生理現象や健康について、非常時に必要とされるケアのこと
生理用品は、赤ちゃんのオムツと同じくらいの生活必需品、ですよね?
熊本での震災の直後、ネットでは、「東日本大震災の時、生理用品が“贅沢品”、“不謹慎”だという理由で配布されなかった例がある」というSNSでの投稿が発端となり、「理解してほしい!『生理用品』は不謹慎でも贅沢品でもない!」 というまとめ記事(※3)が登場するほど話題になりました。さらに、まとめ記事にも登場する下記の漫画はTwitter上で爆発的に拡散し、他のSNS上でも多く取り上げられました。今回の記事の趣旨をとても端的に表現しているため、ここに紹介させていただきたいと思います。
(出典:Twitterアカウント「眉屋まゆこ@育児中」さんのツイート
https://twitter.com/m_mayuya/status/721882111464968196 より)
なぜここまでこの問題が話題になったのでしょうか。それは、今まで当たり前のように思われていた認識が、実は穴だらけだった、ということに皆が気づきはじめた証拠。その「当たり前」とは、一体何でしょうか?
1.男性は生理のことを知らなくてもよい
2.女性は生理のことを恥ずかしく思うべし
3.生理=妊娠としか教えない日本の性教育
まず、男性について。
今の日本では、生理(月経)について驚くほど「間違った認識」をしている男性がまだ多いということ。たとえば、「月に1度=月に1日か2日程度」「性欲と関係がある」「生理は自力でコントロールできる」「ピルを飲めば生理は止まる」…などなど。SNSで拡散する中、多くの女性たちが驚きを隠せない様子でツイートやコメントをしたのが印象的でした。
そこで明らかになったのが、日本では「女性の生理=男性は避けるべき話題」であるということ。時代を遡れば、「生理=穢れ(けがれ)」つまり「不浄」と考えられ、女性はお参りをできない「女人禁制」のお寺があったり、家庭でも生理期間中は男性家族と離れて暮らすこともありました。(諸外国には、いまだにそのような慣習が残っている地域もあります。)そのため、男性にとって女性の生理は知らなくて良いどころか、むしろ「知るべきではない」とされていた文化的背景も、現在まで尾を引いているのです。そのため、間違った認識も当然のように「仕方ないよね、男性だもの」で済まされてしまっているのが現状です。
では女性は、男性の理解不足ばかり非難していいのでしょうか?
女性側の問題、それは「生理に対する自己肯定感の低さ」です。「そんな話は、はしたない」「男性の前でそんな話はしちゃダメ」「生理用品はお店で買うと紙袋に包まれる=見られたら恥ずかしいもの」…こうして「生理=隠すべきもの」という考えが当たり前になってしまい、自分の身体のことなのに、より詳しく知ろうとすることすら、なんだか「後ろめたい」ことのように感じてしまいます。その結果、災害時などの非常時に、生理用品が必要だと言いづらい、受け取りに行きづらい、という事態に陥ってしまうのです。生理は、女性であれば誰もが避けて通れない生理現象。女性が女性である所以の生理を肯定できないと、「自分の女性性」も肯定できなくなってしまいます。
日本は、性教育途上国!?
このような男女それぞれにおける認識の問題は、日本の性教育のあり方にも大きな原因があると考えられます。学校の保健体育の授業において、生理は妊娠や出産にまつわる文脈で教わることが多いため、「生理が始まる→妊娠可能になる」、それゆえに「禁欲か避妊」が授業などで強調されやすくなり、「セックスは良くないこと(不良)である」という位置づけにされがちで、生命の誕生に重要な現象としての「生理」や「セックス」として学ぶ機会がほとんどありません。だからこそ、子どもながらに「生理=(人前で話せない)恥ずかしいこと」と刷り込まれてしまいます。
「生理が始まったから避妊をしましょう」というだけは、生理を学ぶことになりません。生理になると、どういう状況が起こりうるのか。「約1週間、出血が止まりません」「時には寝込むほどの生理痛に見舞われます」「重い生理痛は子宮の病気のサインかもしれません」「生理前後や排卵前後は、感情的にもホルモンの影響を受けます」…など、具体的に身体に起こりうることや、日々の生活に関わることを学校で教わることが、ごく少ないのが日本の現状です。さらに、年頃の娘を持つ母親の多くから、娘にどのように生理について教えたらいいのかわからないという声もあがっています。生理についての教育が必要なのは、大人の女性も同じかもしれません。10歳前後から毎月お付き合いする生理は、まるごと自分の身体と健康のこと。この国では、まず、積極的に生理に向き合える環境づくりが必要なのではないでしょうか。
いま、試されるリプロリテラシー
「被災地における生理用品問題」をきっかけとして明らかになった、日本のリプロリテラシーの低さ。男女ともに正しい性教育がされていれば、生理用品がいかに必要か、そして引け目を感じる必要はないのだ、ということが理解され、困難に直面する女性が減るのではないでしょうか。
最後に、実は生理用ナプキンは、生理ではない日でも下着につければ、断水などで洗濯ができない際に下着不足を補ってくれたり、また止血の応急処理として、カーゼなどの代わりに傷の手当てにも使える優れもの。非常用持ち出し袋にさっそく入れておきたいものです。
(※3)
http://matome.naver.jp/odai/2146088802533852001
『理解してほしい!「生理用品」は不謹慎でも贅沢品でもない!
ライター:
I LADY.編集部
コピーライター / CMプランナー
中西 夏奈子 なかにしかなこ
グローバル・ビューティブランドなど、女性に関わるクライアントの広告コミュニケーションを担当。女性のエンパワーメントを軸にキャンペーンの企画・立案・製作に従事。イギリスの大学院でジャーナリズムを学び、ジャーナリストとしての経験も。プライベートでは、一人娘をI LADY.に育てるべく奮闘中。
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