保育園開園断念と聞くけど…私立保育園と公立保育園の違いは?
2016年9月、東京都・吉祥寺で私立保育園が開園を断念したという報道が話題になりました。この保育園は同市の待機児童数のおよそ3分の2にあたる81人の園児を受け入れる見込みでしたが、近隣住民の反対を受けて開園を断念。このように、近隣住民の同意が得られずに保育園が開園できなくなるというケースが全国で相次いでいます。私立、公立というくくり以外にも、さまざまな形態がある保育園。今回は、保育園の種類について注目していきます。
■保育園と幼稚園、そもそも何が違うの?
幼児が通う場所として、まず幼稚園が頭に思い浮かぶ人も少なくないかもしれません。身の回りには、幼稚園に通っていた人、保育園に通っていた人の両方がいることでしょう。そもそも、これらにはどんな違いがあるのでしょうか。簡単に見ていきましょう。
●幼稚園
満3歳から就学前の幼児を対象に、1日4時間ほどの保育を行う施設です。幼稚園によっては、夕方までの預かり保育が可能なところもあります。文部科学省が所管しており、「幼児の心身の発達を助長すること」が目的とされています。2015年に施行された「子ども・子育て支援新制度」により、幼稚園を利用するためには市区町村の「1号認定」(教育利用)が必要です。
●保育園
1歳未満の乳児から就学前の幼児を対象に、1日8011時間程度の保育を行う施設です。厚生労働省が所管しており、「保育に欠ける乳幼児を保育すること」が目的とされています。幼稚園と同様に、市区町村による「2号認定(保育利用)」または「3号認定(保育利用)」が必要です。利用年度の4月2日時点での年齢が002歳の場合は3号認定、305歳の場合は2号認定となります。保育利用の場合、最長8時間利用となる「保育短時間」か、最長11時間利用となる「保育標準時間」の2種類に分けて認定されます。
●認定こども園
幼児教育と保育の両方の機能を併せ持つ施設で、所管は文部科学省・厚生労働省となります。それぞれの利用方法に合わせ、408時間程度の利用が可能です。幼稚園的利用の場合は1号認定が、保育園的利用の場合は2号または3号認定が必要となります。
■保育園の種類にはどんなものがあるの?
保育園には、大きく分けて「認可保育園」と「認可外保育園」の2種類があります。認可保育園は国の設置基準を満たし、都道府県による認可を受けた施設のこと。認可外保育園は認可保育園以外のすべてを指します。例えば、東京都の認証保育園をはじめとする、地方自治体の独自基準を満たした施設であっても、認可外にあたります。そのほか、企業や病院が従業員向けに設けた保育園(事業所内保育園)や、ベビーホテルなども認可外保育園です。
●「地域型保育」って何?
現在では保育園だけではなく、002歳の子どもを対象とした「地域型保育」という少人数預かり事業も展開されています。地域型保育には、“保育ママ”の自宅などで保育を行う「家庭的保育」や19人以下の定員の「小規模保育」、事業所保育園で地域の子どもも預かる「事業所内保育」、保育者が自宅に訪れた保育を行う「居宅訪問型保育」の4種類があります。
■公立保育園と私立保育園の違いは?
保育園には、運営者による違いもあります。公立保育園は市区町村、私立保育園は社会福祉法人などが運営しています。この中間にあたるものとして、「公設民営」という形態の保育園もあります。市区町村が設置していても、実際の運営を民間事業者に委託しているというものです。それでは、公立保育園と私立保育園の特徴をそれぞれ見ていきましょう。
●公立保育園
・市区町村が運営
・保育士は「地方公務員」
・保育士の異動が起こりうる
・ベテランの保育士が多い
・市区町村内の保育の質が保たれる傾向にある
・民営化されるリスクがある
●私立保育園
・社会福祉法人をはじめとする民間事業者が運営
・規制緩和により、NPO法人や企業が運営母体の園も増加している
・運営母体によって保育の方針が異なる
・公立と比べ、延長保育などのサービス面が充実する傾向にある
・若い保育士が多い
・保育士さんの入れ替わりが激しい園もある
私立保育園の場合、園の特色がさまざま。例えば、宗教法人が運営している保育園の場合は、仏教やキリスト教の考え方に基づいた保育が行われています。仏教系の保育園の場合は「花まつり(お釈迦様の誕生日)」などの仏教行事が取り入れられていたり、キリスト教系の保育園の場合は毎日礼拝が行われていたりするところもあるようです。そのほか、最近増えている企業運営の保育園では、英会話や数学など教育に力を入れているところも多いといわれています。見学に訪れたり、資料をきちんと読み込んだりして、それぞれの園のカラーをつかんでおきましょう。
■私立保育園の申込方法は?
「公立保育園と私立保育園で申込方法が違うのでは?」と思っている人もいますが、認可保育園であればどちらも同じ申請方法です。まず、「保育の必要性」の認定と保育園の利用希望を市区町村に申請します。翌年の4月入園を希望する場合は、その年の10011月頃に申請を受け付けているところが多いです。申請後、市区町村がひとりひとりの保育の必要性をジャッジ。保育の必要性が認められたら、それぞれの希望や市区町村の状況に応じて「利用調整」が行われます。この利用調整の結果が判明するのは、翌年の2月頃。市区町村から2号または3号認定の認定証と、利用調整の結果が送付されます。「入所承諾」(内定)が取れた場合は、後日に健康診断や面接などを行い、問題なければ市区町村と契約を行います。残念ながら「入所不承諾」となってしまった場合は、希望する保育園の定員に空きが出るまで待機することになります。認可外保育園や家庭的保育を利用して待機している人もいれば、育休を延長して待機する人もいるようです。
いかがでしたか?待機児童の増加や、保育園の開園断念といったニュースだけではわからない、「保育園」という施設がどんなところかについてご紹介しました。これから保育園を申し込むという人は、公立保育園、私立保育園それぞれの特徴をふまえ、ニーズに合った施設を選ぶようにするといいでしょう。まだ子どもがいないという人も、これらの知識の有無によって今話題になっている社会問題の見え方が変わってくるかもしれません。今後の報道にも注目していきたいものですね。
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