日本で増えているって知っていた?赤ちゃんの先天性の病気「神経管閉鎖障害」について

ママが妊娠に気づき始める妊娠4~7週。子宮の中の赤ちゃんはまだ姿が見えないほど小さな存在ですが、どんどん成長を続けて体の重要な器官がつくられていきます。脳や脊髄のもとになる神経管が形成されるこの時期には、神経管がきちんとした管の形にならず、二分脊椎症や無脳症などの「神経管閉鎖障害」が起きることもあります。その原因の一つとなるのは、母体の葉酸不足なのです。

海外より10年遅い? 葉酸摂取に対する日本の取り組み

ビタミンB群のひとつである葉酸は、細胞の増殖と臓器の形成にかかわる栄養素で、子宮内の赤ちゃんの細胞増殖が盛んな妊娠初期に特に必要量が増加します。欧米など海外で実施された研究から、妊娠前に葉酸を十分量摂取することで赤ちゃんの先天性疾患である神経管閉鎖障害の発症リスクを低減できることが明らかになっており、1990年代に世界各国で妊娠を希望する女性に対して葉酸摂取量を増やすよう勧告が出されました。また、アメリカとカナダでは1998年からシリアルやパン、パスタなどの穀類加工食品に葉酸を添加するよう法律で義務付け、その結果、両国とも神経管閉鎖障害の発症リスクが低下したと報告されています。(※1、2)

 その一方、日本では神経管閉鎖障害のひとつである二分脊椎症の発症率が増加傾向にあり、2009年には約600人の二分脊椎症の赤ちゃんが生まれたと推計されています。(※3)

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実は、かつて日本での二分脊椎症の発症率は諸外国に比べて低く、神経管閉鎖障害と葉酸の関係についての調査や研究はほとんど実施されていませんでした。しかし1999年に日本で二分脊椎症が増加傾向にあることが報告され、さらに食生活の多様化によりこの先も葉酸摂取が不十分な人が増える懸念があることから、海外で同様の勧告が出されてから約10年後の2000年、厚生労働省から妊娠可能な年齢の女性に対して葉酸の摂取を推奨する通知が出されました。2002年からは母子手帳にも葉酸摂取の必要性が明記されています。(※4)

サプリメントや葉酸添加食品も活用 未来の赤ちゃんのために、妊娠前からの葉酸摂取

厚生労働省が制定した「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、18歳以上の日本人女性の葉酸摂取推奨量は1日当たり240μg、妊娠を計画している女性では640μg 、妊婦では480μg、授乳婦では340μgとなっています。注目なのは、妊娠後よりも妊娠前のほうが摂取量が多くなっていること。神経管閉鎖障害のリスクを減らすには、妊娠してからではなく、赤ちゃんの神経管が形成されるタイミングに間に合うよう、妊娠を考えている段階から葉酸の摂取を始めておくことが重要なのです。

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しかし、妊娠した日本人女性に意識的に葉酸を摂取していた時期を尋ねた調査(※5)では、妊娠前から葉酸を摂取していた人は2030%、妊娠23ヵ月が約70%、それ以降が40%という結果になっており、妊娠前や妊娠早期からの葉酸摂取が不足している現状が見えてきます。

 水溶性ビタミンである葉酸は、食材の水洗いや加熱など調理の過程で失われやすく、普段の食事だけでは十分な摂取が難しい面もあります。現在のところ、日本では食品への葉酸添加は義務化されていませんが、各メーカーが自発的に葉酸を添加したシリアルやパンなども販売されています。このような葉酸添加食品やサプリメントをうまく活用して、妊娠前からの葉酸摂取を心がけましょう。

 

情報提供元:バイエル薬品

 ※1:厚生省児童家庭局母子保健課長,厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課生活習慣病対策室長,「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について ※2:厚生労働省 難治性疾患克服事業・研究班 葉酸普及研究会 ※3:International Clearinghouse for Birth Defects Surveillance and Research (ICBDSR). Annual Report 2013国際先天異常モニタリングセンター/JAOGの報告に基づく ※4:独立行政法人国民生活センター,報道発表資料, 平成23年5月26日 ※5:エレビット®発売記念講演会 平岡真美先生(淑徳大学 看護栄養学部 栄養学科 准教授)

この記事のキュレーター

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